昨晩のウォール街では、カリスマ投資家ドラッケンミラー氏のウォール・ストリート・ジャーナル紙への寄稿を巡り、侃々諤々の議論が乱れ飛んだ。
ドラッケンミラー氏といえば、ソロス氏の盟友。
本欄にも、たびたび登場してきた人物。↓
ソロス氏の盟友、金大量保有明かす | 豊島逸夫による金市場の解説 ブログ一覧 | 豊島逸夫による金市場解説 | ブログ | 「金の果実」シリーズ|三菱UFJ信託銀行 https://kikinzoku.tr.mufg.jp/ja/blog/market/archive/archive-921518260083606363711.html
彼の弟子が、ベッセント現財務長官とウォーシュ現FRB議長という関係。
ソロス一家も錚々たるメンバーだね。
ウォーシュ氏は、数年前のテレビ出演で、「私はドラッケンミラー氏をmentor(師匠)として尊敬している」と明言していた。その「師匠」が、WSJに、長文の寄稿。今回のベッセント財務長官の米国債買い戻し介入を、愚策といわんばかりの口調でこきおろしたのだ。曰く「このような市場介入は、当局の負けだ」。
ソロス一家に草鞋を脱いでいた時代に、英国政府を相手に、ポンドを売り倒し、勝った実績があればこその説得力。
「財政赤字のファンダメンタルズを変えなければ、人的介入は、問題の先送りに過ぎない」と批判した。
筆者流にいえば、住宅ローンの毎月の返済を、クレジットカードで決済するようなもの、ということか。
まぁ、それを一番身に染みて感じているのも、ほかならぬベッセント氏であろう。
しかし、財政赤字のファンダメンタルズを変えるということは、財政支出減、或いは、増税。
中間選挙を控え、支持率低下中の、トランプ親分が許すはずもない。
人気取りの、ばらまき財政のコスト(米国債発行の金利支払い)上昇は、なんとしても抑制せねばならない。
巨額の米国債が売られるようなことがあれば、トランプ政権への不信任票と見られかねない。
これは財政政策の問題だが、ドルを供給するのは、FRB。すなわち、金融政策の問題だ。
事実、コロナ対策などで、FRBは巨額のドルをばらまき、今は、それを徐々に回収する段階にある。9兆ドルを超えた資金供給も、量的引き締め(QT)により、6兆ドル台にまで減ったが、まだ、6兆ドル以上が残っている、ともいえる。
ウォーシュ氏は、「FRBの肥大化」を以前から批判。
同時に、FRB議長就任後は、物価安定を最重要視して、インフレ退治のための利上げも辞さず、の構えだ。
しかし、現段階では、利上げが必要なほど、インフレが粘着質(しつこい)か否か、見極めている状況。
FOMC内部でも意見が割れている。それゆえ、今週金曜日のジャクソンホールにおけるウォーシュ講演が注目されているのだ。
かくして、FRBの利上げ(短期政策金利)に対し、財務省は、無茶ぶりと言われようと、長期金利上昇の抑制に動く。
どう見ても、危うい状況だ。
米国経済混乱に備え、金をリスクヘッジとして保有するという投資家行動は、今後も続くであろう。
ベッセント氏もウォーシュ氏もソロス一家出身ゆえ、個人的には安全資産として米国債より金を保有したい、というのが本音だろうね~
このような実態を見せつけられると、世界の中央銀行が、公的金購入に走る傾向も強まるばかりとなろう。金はドルの代替通貨といわれるが、筆者に言わせれば、ドルが金の代替通貨なのだ。
米国債もドル紙幣も刷れるが、金は刷れない。
ソロス一家の面々は、この事実をヘッジファンドとして痛感しているのだ。


