金、プラチナ、銀、パラジウムには次のような特性があります。

金 プラチナ 銀 パラジウム

概要

金属の中では展延性が最も優れており、加工が容易。化学反応を滅多に起こさず腐食しない。世界に 通用する価値を有し、換金性が高い。

金の26分の1しかとれず、極めて希少性が高い。優れた触媒機能、高い融点、金属としての安定性を 持ち、産業用に幅広く使われている。

金属の中で最も電気と熱を伝達しやすい。また、金に次いで展延性が高い。電子産業には欠かせない素材の一つ。銀イオンはバクテリアに対し殺菌性がある。空気中では硫化し黒ずむ性質がある。

プラチナと同系統の金属で、希少性が高い。安定性と硬度が高く、触媒機能を有するなど優れた性質 を持つ。合金を作りやすく銀歯やホワイトゴールドが有名。

供給

中国、オーストラリア、アメリカ、ロシア、南アフリカ

南アフリカ、ロシア

メキシコ、ペルー、中国、オーストラリア

ロシア、南アフリカ

主な需要

宝飾品、電子材料(コネクタなど)、歯科材料、投資(地金、コイン、ETF)

自動車の触媒(排気ガスの浄化)、宝飾品、燃料電池の電極

対応電池の電極、メッキ、宝飾品、銀器

自動車触媒、電気產業、宝飾品、歯科材料

金の特性

金の商品としての最大の特徴は、その「希少性」です。
有史以来、人類が採掘・精製した金の総量を「金の地上在庫」と呼びますが、リフィニティブGFMS社(旧 Gold Fields Mineral Services社。ロンドンに拠点を置く貴金属調査会社で、その貴金属需給に関する各種統計は高い信頼性を得ています、以下GFMS)の調べによれば、2018年末時点での金の地上在庫は約190,400トンと推定されています。
米国地質学調査所USGS(United States Geological Survey。 “Mineral Commodity Summaries 2019”)によると、そのうち経済的に生産可能な部分(これを「埋蔵鉱量」といいます)は約54,000トン、同年の年間生産量3,332トンなので可採年数は16.2年となっています。
 

金の需給

金の主な供給元としては、鉱山における生産による一次供給、スクラップから回収される二次供給、公的機関による売却、鉱山会社による売りヘッジ、そして退蔵放出などが挙げられます。金の2018年の 総供給量は4,502トンでした。
金の需要は、宝飾品用、工業用、歯科用、メダル・貨幣用などの加工用需要と、有事における備えや投資目的による金の保有といった退蔵用需要とに大別されます。
GFMSの調べによれば、2018年末時点での金の地上在庫190,400トンの内訳は、宝飾品が47.4%、公的保有及び個人保有金が38.4%、その他加工品が14.2%となっています。
(上記金の需給統計に関する数値は、ことわりのない限り、リフィニティブGFMS社の“Gold Survey 2019”によります。)

プラチナ

プラチナの特性

プラチナの有史以来の生産量は、約7,200トンと非常に少なく、金の約19万トンに比べてもその26分の1以下しか生産されていません。その意味で金以上に希少性の高い貴金属と言えます。
また、優れた触媒作用や高い融点、化学的に安定しているという特性から、その利用は化学、電子産業、ガラス、石油精製、高温測定などの工業用、さらには医療、環境関連分野にまで及んでおり、21世紀の産業に欠かせない貴金属です。

プラチナの需給

プラチナの供給の特徴は、まず鉱山生産量が金・銀に比べ少ないことが挙げられます。2018年の世界のプラチナの鉱山生産量は185トンと、金の鉱山生産量約3,332トン、銀の約26,616トンと比較すると小規模です。またプラチナの鉱山生産は、南アフリカ共和国(134トン)とロシア(22トン)の2国で世界全体の約84%を占めており、供給ソースの偏在が著しいものとなっています。
プラチナの主要な需要は、工業用需要と宝飾品需要です。2018年の工業用需要(自動車触媒の回収 分差し引き後)は169トンと、全体の需要の約69%を占めており、これは金の10%と比較し高いことが分かります。このため、プラチナの需要及び価格は世界の景気動向の影響を受けやすいものとなっています。工業用需要の中では、自動車触媒用需要が最大で約58%を占めており、また、宝飾品需要は全体の約27%を占めます。
(上記プラチナ・銀の需給統計に関する数値は、リフィニティブGFMS社の「Platinum & Palladium Survey 2019」及び「World Silver Survey 2019」によります。)
 

銀の特性

銀は主として硫化物鉱床中に存在しており、自然銀・砂銀として産出されることは極めてまれでした。そのため、かつては砂金の形態で産出される金よりも産出量が少なかった時期もあり、その希少性ゆえに20世紀に入るまでは金と並んで主要通貨として使用されていました。また、その白銀色の美しい色合いゆえに、銀は太古の昔から宝飾品の材料としても珍重されてきました。
しかし、銀の精錬技術の発達と、19世紀に入ってからの大銀山の発見によって、銀の生産量は増加し、有史以来、人類が採掘・精製した銀の総量は100万トン以上に達すると言われており、この数字は金の約19万トンを大幅に上回っております。加えて銀については回収システムも既に整備されており、その供給規模の大きさゆえに銀の希少性はもはや失われたという見方も多くなっております。

銀の需給

銀の供給源は、鉱山生産と二次供給が中心的な存在となっています。公的機関による銀の売却もありますが、供給全体に占める割合は金と比較すると小さいものとなっています。鉱山会社による売りヘッジも、比率としてはわずかなものに過ぎません。
銀の需要は、かつては金と同様に宝飾品や通貨手段として用いられていました。しかし時代が進むにつれ、銀は、その熱や電気の伝導性の高さや加工性の高さから、工業用としての重要な役割を果たすようになっています。現在の銀の需要を大別しますと、写真感光材料としての写真フィルム産業部門、その他の工業部門、宝飾品部門、メダル・貨幣部門の4つに分けられます。

パラジウム

パラジウムの特性

パラジウムは、貴金属の中でも希少性が高く、レアメタル(希少金属)の一種でもあります。自動車触媒、電子機器などの工業用需要、あるいは歯科用材料等として用途が幅広いのですが、技術の発達により実用化が可能となったのは比較的最近のことです。
 

パラジウムの需給

パラジウム供給の特徴は、供給ソースが限られていることであり、ロシア(83トン)、南アフリカ共和国(79トン)の2カ国で世界全体の約77%を占めています。
パラジウムの供給量は、1980年代は約80トンから100トンの間で推移しましたが、1990年代に急速に伸び、1998年には261トンを記録するに至ってます。しかしその後は4年連続して減少し2002年には163トンにまで下落、そして再び上昇傾向に転じましたが、2007年から2009年にかけては、世界的な景気低迷に伴い供給量の減少が続いており、2014年には再度200トンを割り込みました。しかし、その後は200トンを回復し、2018年には210トンとなりました。
パラジウムの需給は、主要生産国であるロシアからの供給(売却)が年によって大きく変わるため、その動向が最大の変動要因となります。需要面では総需要の6割強が先進国での自動車触媒と電子・電気部門に集中しているため、日米欧の景気動向が重要視されます。
また、パラジウムは白金の代替商品としての性格を持っており、白金価格があまりに割高になると、例えば、自動車触媒に用いる白金の使用量を減らし、パラジウムの割合を増やすといったことが行われます。その場合は、パラジウム価格の上昇要因となりますが、逆にパラジウムが高くなりすぎると、白金に回帰するという傾向が見られれます。
(以上、需給統計に関する数値は、リフィニティブGFMS社の「Platinum & Palladium Survey 2019」によります。)