さて2023年9月からほぼ毎月連載してきました「金投資」についてですが、早いもので今回が最終回となります。
これまで5回にわたる連載の中で、資産運用の方法や投資対象としての「金」の役割等について説明して参りました。
しかし資産運用について「分散・長期・積立」と言いますが、実際は例えばですが
「分散させる資産は何があって、どれくらいの配分にしたら良いの?」
「各資産毎にどういう銘柄を買えばいいの?」
などの疑問をお持ちの方も多いでしょう。
そこで、最初の疑問に対して参考になるのが、私たち国民の年金を管理・運用している厚生労働省所管の独立行政法人である年金積立金管理運用独立行政法人(Government Pension Investment Fund:GPIF)の資産構成(ポートフォリオ)です。
私たちが長期にわたって受け取る年金の運用ですから、“GPIFによる年金積立金の運用は、株式や債券などの資産を長期にわたって持ち続ける「長期運用」によって、安定的な収益を得ることを目指しています”。
世界の経済活動などに資金を提供する対価として、収益という果実を享受していることになります(下線部、GPIFのホームページより一部抜粋)。
そして同ホームページで公表している運用における資産構成(基本ポートフォリオ)は以下のとおりです(2024年3月現在)。
国内株式:25%
外国株式:25%
国内債券:25%
外国株式:25%
ここから各資産毎に数%程度の乖離許容幅を設けています。
綺麗な分散投資になっていますよね。
更に上記基本ポートフォリオについては、マクロ経済や市場等の動向を注視しつつ、策定時に想定した運用環境から乖離がないか、適時適切に検証を行い、必要に応じて見直しの検討を行うこととされています(下線部、GPIFのホームページより一部抜粋)。
以上から、みなさまもまずは基本的な国内外の株式・債券(伝統4資産)について、GPIFの資産構成を参考にしてみるのもひとつの方法だと筆者は考えています。
そして、これら資産の中に、これまでの連載の中でお話してきました(まさに本連載の題目です!)「資産運用の保険」としての役割を果たす「金」を少しでも加えてみてはいかがでしょうか?
資産の配分については、以上から大体お分かりいただけたと思いますが、これらの位置付けを、あくまでも筆者の考えですが異なる視点で今一度整理してみたいと思います!
“ねらう”=株式:リスクは他資産と比較すると高いものの、期待リターンが「狙える」資産
“かせぐ”=債券:リスクは株式より低く、安定した利回りを「稼いで」くれる資産
“まもる”=金:他資産と異なる動きをし、全体の資産を「守って」くれる保険としての資産
と考えてみるのはよいと思いませんか?
さて、次の疑問である「具体的には何を買えばよいか?」について考えていきましょう。
例えば、株式。
個別銘柄で運用資産の25%程度をそろえてもよいのですが、手軽にマーケットの動きを反映している「インデックスファンド」というマーケット全体の動きと同じように動くファンド(ETF、投資信託など)があります。
「〇〇〇インデックスファンド」いうような名称になっています。
国内株式型はもちろんのこと、外国株式型についても存在しています。
これらを利用すると、そのマーケット全体の運用成果(パフォーマンス)とほぼ同程度の運用成果を得られることになると考えられます。
更に一歩進めると、例えば同じ株式ファンドを選択するにあたっても、高い値上がり益をねらうのか、高い配当を出す株式をねらうのかというような選択肢が出てきます。
債券についても、株式と同様に「インデックスファンド」というマーケット全体の動きと同じように動くファンド(ETF、投資信託など)があり、国内債券、外国債券について存在しています。また債券についても金利が高い債券に投資して高い利息収入をねらう(リスクは高くなる)のか金利がそれほど高くないが安定的な利息収入をねらうのか(リスクは比較的低い)といった選択肢があります。
このあたりの話しになりますと、運用を開始した後の次のステップになってきます。
そして、最後に金です。
金の資産としての特性や購入方法につきましては、これまでの連載の中で詳細に説明して参りましたので、ぜひもう一度本連載を第1回から読み直していただければ幸いです。
日本の国をあげての資産運用へ
資産運用先進国と言われる米国・欧州から従来の日本は、大きく取り残されてきました。
しかし、ようやくここに来て政府もいろいろと資産運用を後押しする政策をたてるようになりました。
2022年に『貯蓄から投資へ』・『資産所得倍増計画』推進が提唱され、これから資産運用・資産形成していく方々に対して、ようやく国をあげての方針が発表されました。
そして現在2024年には、少額からの投資を行う投資家のために新型NISA「少額投資非課税制度」がスタートしました。元々あったNISAの拡大版として位置づけられています。
新型NISAでは従来のNISAに比べて、年間投資上限額が拡大されたうえ非課税期間が無期限になるなど大幅な改良が施され、国民が証券投資するにあたり背中を押した形です。
もともとのNISAの語源は、イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルにした日本版ISAとして、NISA(Nippon Individual Savings Account)という愛称がつけられました。
NISAを活用すると、運用益(売却益・配当/分配金)が非課税となります。
通常は株式や投資信託などの金融商品に投資した場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかります。
ただし、NISA口座で投資できる上限金額は決まっていることには注意してください。
運用資産(“人生“を形成する資産)を守り抜くために、政府が後方支援してくれていると考えていいでしょう。
そして個人のみなさまにおかれては、安心感を持って長期に運用することが大事なのです。
資産運用がもたらす人生の豊かさ
人生100年時代。ライフプランや価値観が多様化する中、人生において資産運用(資産形成)の重要性が以前にも増して高まっています。
「老後の備え」に不安を感じ、資産運用の必要性を理解しているのに、最初の一歩を踏み出せない方々が大勢いらっしゃいます。
まだ資産運用に取り組んでいない方は、これを機会に始めてみませんか?
資産運用によって得られるのは、経済的な安心だけではありません。
お金(資金)を投じるのですから、社会や経済の動きが気になってくるはずです。気になったら、ネットで調べたり、新聞を読んだり、勉強したりします。そうすると、知識が増え、世の中のことがわかり、考えが深まり、ご自身の考えも確立されていくと思います。
さらに友人や家族と意見を交わし、コミュニケーションが広がり、仲間と喜びを分かち合う機会も増えてくるでしょう。
資産運用に取り組むことは、お金のためだけでなく、人生を豊かにするきっかけにもなると筆者は考えています。
そして、みなさまがより安心・安全に資産運用ができるよう、資産の一部を金に運用していただくことで、金が保険の役割を果たし、みなさまの大切な資産を「まもって」くれることを切に願います。
最後に全6回の連載となりましたが、筆者が記してきたことや考え方が、今後のみなさまの資産運用・人生において、ほんのわずかでも一助になれば幸いです。
ここまでのアクセス、誠にありがとうございました。
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【第5回】 株式はじめ資産の買い方