イランにおける地政学リスクの増大にかかわらずゴールドは下落しています。これはなぜなのか。疑問を感じている投資家も多いでしょう。今回は現在起こっているこの新たなリスクに対するゴールドの反応、そしてその意味するところを筆者の理解から解説したいと思います。

 

(年初来のゴールドとWTI原油の動き)
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(年初来のゴールドとWTI原油の動き)

米国とイスラエルによるイランに対する攻撃は2月28日の週末に突然行われました。和平交渉中におこなったことで、これは完全に不意打ちであり、「卑怯」そのものの攻撃と言えます。

 

おそらくトランプ大統領は、ベネズエラと同じようにイラン首脳部を排除し、国民の反体制蜂起を期待したのでしょうが、その期待は全くもって見通しの甘いものであったことがその後の事態の進行ではっきりしています。それどころか、イランの徹底的な反抗、そしてホルムズ海峡の封鎖の可能性を全く考慮していなかったように見えます。そうであれば信じられないような失態です。

 

それはさておき、この週末のイラン攻撃の前の金曜日のゴールドは5,270ドル近辺まで上昇して終わっていました。週末にイランで何かあるかもしれないという恐れはおそらくマーケット参加者は感じており、週末前にリスクポジションを閉じておくという動き、つまりゴールドのショートは買い戻しておくという動きがあったものと思います。

 

そして週末のイラン攻撃受けて3月2日月曜日に最初に始まったアジアのマーケットでは、ゴールドは一時5,400ドル台まで上昇しました。しかしその上げは続きませんでした。「有事イベントでのゴールドの上げは売り」という過去からの経験則は今回もまた正解であったと言えるでしょう。

 

そして今回のイラン有事の「特殊性」が、その後マーケットの動きの背景にあります。この地政学リスクが世界経済の血液とも言える「原油」の流れを滞らせてしまっているということです。ホルムズ海峡の閉鎖はロシアのウクライナ侵攻の比どころではない影響を世界に与えています。

 

  • 原油の供給が不安定になり、価格の上昇による世界のインフレ加速は必至。
  • 世界中の中央銀行は金利下げどころか、金利上げの可能性も出てきたこと。
  • 実質金利の上昇。リスク資産には厳しい状況になり、Cash is king状態となりドルの上昇。
  • 短期筋のmargin calls への対応の売り。弱いロングの市場離脱の売り。

 

とこれらの状況でゴールドも売られていると思われます。

この状況、究極的にはイラン情勢が落ち着くまでは続く可能性があります。しかし、原油100ドルが続けば、インフレは加速し、最終的にはインフレと不況が同時進行するスタグフレーションへと進むかもしれません。ゴールドは現在下値を試していますが、インフレの加速と地政学リスクの増大で最終的に底値を確認したあと上昇すると考えています。

 

特に我々日本人にとっては最大のリスクはインフレと円安です。現在でも何もせずに現金を持っていれば3%のインフレであれば、100万円の購買力は1年で97万円に減価します。イラン情勢でホルムズ海峡が閉鎖され、原油価格が大幅に上昇した今後はこのインフレが加速することは必至です。だとすれば現金を極力、インフレに強い資産に変えておくべきです。その代表がゴールドです。

 

インフレの加速で本来であれば大きく上がっておかしくないゴールドが上記のような特殊要因のために逆に大きく値を下げている今、インフレ対策としてゴールドを買っておくまたとないチャンスであると筆者は考えます。ゴールドの下げはこの状況でそう長くは続かないのではないでしょうか。

 

以上