前回の原稿からずいぶんと時が経ってしまい誠に申し訳ありません。言い訳をさせてもらうとすれば、非常に忙しかった、の一言です。そう、マーケットの動き方が尋常ではありませんでした。前回の原稿は2025年の年末で、「2025年の回顧と2026年の展望」でした。その原稿を書いているときのゴールドは4,337ドル、シルバーは67ドル、プラチナは1,972ドル、パラジウムは1,713ドルでした。そして2026年の展望として私があげたのが、以下の展望でした。結構な強気の予想のつもりだったのですが、すべてのメタルが早くも1月にその予想を大きく超える上げ方をしてしまいました。

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- 「ゴールド:5,000ドルを目指す動き」

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- 「シルバー:100ドルの可能性も」

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- 「プラチナ:2,300ドルの歴史的高値更新も」

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- 「パラジウム:1,800ドルへ」
「急騰急落のゴールドマーケットの背景と今後」
それでは年初からのゴールドの動きを分析してみましょう。
このマーケットはすくなくとも筆者が見てきた過去40年では類を見ない規模の大きな動きとなりました。4,300ドルで始まったゴールドは1月26日月曜日にはマーケットオープンでいきなり5,000ドルの大台を超えました。
筆者の昨年末に出していた相場予想は2026年にはゴールドは5,000ドルの大台を超えるだろうというものでしたが、あっという間に、初月でそのレベルを超えてしまいました。そしてさらに驚いたことには、1月26日に5,000ドルを超えてわずか3日後の29日には、5,594ドルとほぼ600ドルの上昇。これが現在のところの歴史的高値となりました。
年初の4,300ドルから一ヶ月足らずで30%の上げ。これはさすがにどう考えても上げすぎでした。この上げの背景は、ゴールドが上がることによって、より多くの投資家、もっと詳しく言うと多くの短期的投資家がレバレッジをかけて先物市場に一気に買い参入してきたということです。この買いがゴールドの上昇を大きく加速しました。買ったポジションが上昇することによって、それを原資にして、さらにポジションを加速度的に増やしていく、それによってさらに価格が上がっていくというスパイラル現象となった結果がこの上昇の背景でした。
筆者は昨年くらいから、近年のゴールドの上昇がバブルでないかと問われる度にそれを否定してきました。ゴールドは上がるべくして上がっている、と。しかし、この年初からの急騰、特に5,000ドルを超えてからの3日間での600ドルもの上げはまさにバブルでした。
当然このような前代未聞の上がり方にはそれなりの結果が伴います。この急騰に冷や水を浴びせたのはまずCME(Chicago Mercantile Exchange:世界最大のゴールド先物を上場しています。)による証拠金の引き上げでした。レバレッジをかけてポジションを持った投資家にとっては証拠金の引き上げは、待ったなしに資金の追加を強制します。もし資金に余裕がなければ、ポジションを減らす、つまりロングポジションを閉じる=売るということになるわけです。
それにより価格が下がればさらに残ったポジションへの証拠金積み増しをする必要が出てきます。こういった負のレバレッジがかかるとそれはまさに雪玉のように急速に膨らんでいくわけであり、上昇時のスパイラルの全く逆のパターンです。
ほぼ同様のタイミングで新たなFRBチェアマンとして、ケビン・ウォーシュ氏が指名され、その政策が必ずしも利下げに積極的ではないという見方からこれもまたゴールドにとっては弱材料となったのは確かでしょう。
ただこれらは売りのきっかけに過ぎないと思います。これらのニュースだけで、ゴールドが一日に1,000ドルも下げることはあり得ないと考えます。この歴史的高値からの急落は、ほぼ100%、ゴールドマーケットが「混雑」して買われ過ぎたという「マーケットの内部要因」が原因です。
要は「あまりに買われ過ぎ」という状況があったからこそ、あれだけ大きな下げがあったわけです。だとすれば、この内部要因であった短期筋の異常なロングポジションが整理されれば、本来のマーケットに戻る、ということになります。
ちまたにはこの暴落により、もうゴールドが終わったというような意見も少なくなかったのですが、これはあくまで積み上がった短期的ロングの振り落とし以外の何物でも無いと考えます。そもそもこの急落は、そこに至るまでの急騰があったからこそ起こったものです。今回のこの急落の結果、長期的投資家にとっては絶好の買い場となりました。短期投機家にとっては悪夢の動きであったかもしれませんが、ゴールドの長期投資家にとってはまるで降って湧いたような買いの機会になりました。
5,500ドルだったゴールドが翌日には4,500ドル以下にまで、1,000ドル以上下げたのですから。その後のゴールドはやはり、短期ポジションが整理されるとふたたび上昇となり、3月12日現在5,200ドル近辺まで価格を戻しています。
この間に米国とイスラエルによるイラン攻撃があり、マーケットはまだ不安定な状況にあります。しかし、1月末の急騰急落劇の結果筆者が意識を新たにしたのは、このような短期トレードが、マーケットに一時的に大きなボラティリティを与えても、結果的には短期トレードと長期トレードが交差しながら、ゴールドは長期的には上昇していくだろうということだ。
以上


