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- (ドル建てシルバーの動き:2年)
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- (円建てシルバーの動き:2年)
1.シルバーもリースレートが高止まり
前回はプラチナに関して書いたが今回はシルバーです。プラチナのリースレートが高止まりをしているという話をかきましたが、実はシルバーもプラチナまでは行きませんが、同じくリースレートが近来ないレベルで高止まりしています。一年前はゴールドとほぼ同じレベルでしたが、今年1月に関税問題でゴールドとシルバーも同様に大きく上げたあとゴールドは徐々に元に戻りつつありますが、シルバーは未だにリースレートは高止まりのままです。その背景にはゴールドとは違う流動性の不足があります。
(リースレートの比較)
【2024年3月1日】

【2025年3月4日】

トランプ政権が始まり、大統領が「関税」を振りかざし始めたことによって米国の先物市場CMEとLoco London Spotマーケットの価格が乖離、先物が理論値を大きく越えて上がったことから、大量のゴールドそしてシルバーがロンドンからニューヨークへと移送されました。(これは2月に詳しく書きました。)それによりロンドンのLoco London Accountのメタルが少なくなり、金利にあたるリースレートが上昇しているのです。LBMA(London Bullion Market Association)が発表しているメタルの残高を見ると、中央銀行の保有しているものがふんだんにあるゴールドとそうではないシルバーの残高の減り方には大きな違いが見て取れます。それがリースレートの高止まりとして表れているのでしょう。
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- (Loco London Gold & Silverの残高推移)
2.続く供給不足
シルバーはプラチナと同じく、いやプラチナよりもより長く供給不足が続いています。2019年からもはや昨年2024年で5年連続の供給不足となっており、今後もこれが解決される見込みはありません。その最大の原因は、増えない供給、そして増え続ける需要にあります。増え続ける需要はずばり太陽光発電需要です。2015年は1,852トンであったものが2024年は7,217トンとほぼ4倍に近い伸びとなっています。おそらくこの流れは変わらないでしょう。この供給不足分がLoco London Accountからの現物引出によって賄われていたと考えればLoco Londonメタルの減少にも納得がいきます。それが今回のCMEへの大量のメタル移送により、メタル不足により拍車がかかっており、リースレートの上昇はこの急速な流動性の減少を表していると言えるでしょう。このLoco London Metalが本当になくなってくると価格は上がることは必須となるでしょう。
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- (シルバー需給表 by Metals Focus)
3.金銀比価の歴史からみた現在のシルバーの割安さ
金銀比価とはゴールドの価格をシルバーの価格で割ったものです。つまりシルバー建てのゴールドの価格だと言っていいでしょう。3月7日のマーケットクローズは89.45。つまりゴールドはシルバーの89.45倍、シルバーはゴールドの89.45分の1というのが現在の金銀比価ということになります。これは歴史的にみても非常にシルバーが割安な状況にあります。1971年にドル金本位制で固定相場(ゴールドは1オンス35米ドル)であったブレトンウッズ体制が終わり、変動相場制が始まってからの金銀比価の平均は約60分の1から65分の1程度です。今月初めは92対1までありました。これを人類の歴史からみてみましょう。
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- (シルバー価格と金銀比価、過去50年の動き)
古代、ゴールドは砂金のような「自然金」が見つかり、人類の歴史の比較的早い時期から我々と一緒にあったと想像されます。ところがシルバーは「自然銀」は非常に希であり、おそらくごく初期においてはゴールドよりもシルバーの方が価値が高かったのではないかと思われています。しかし古代にはすでにその価値は逆転し、その価値関係は2対1から5対1くらいであり、それがギリシャ・ローマ時代には10対1、中世ヨーロッパで15対1とシルバーの生産が増えるのともにゴールドに対する価値は低下していきました。16世紀以降の欧米では16対1がその標準となりましたが、同じ時期の日本では5対1であったため、幕末には南蛮船がシルバーを南米やインドから日本に持ち込み、それを5対1でゴールドに交換し、欧州に持ち帰り16対1でシルバーに交換するという「裁定取引」が大々的に行われ、ジパングとまで呼ばれた日本から大量にゴールドが流出したのでした。1971年、ニクソンショックにより、ドル・ゴールド本位制が終わったあとの金銀比価は30対1から40対1となりましたが、その後1980年にハント兄弟の買い占めで一時的に金銀比価は16対1まで縮小しましたが、その後はどんどんその差は拡大、現在の90対1までに至っています。こうやって歴史的にみても、現在の金銀比価はゴールドが異常に高く、シルバーは安い状態にあります。基本的にゴールドとシルバーは同じ方向に動きます。だとすればゴールドがどんどん上昇する今、割安に捨て置かれているシルバーを買うのは賢いチョイスであると思います。過去50年の平均が約60対1です。90対1から70~80対1まで戻す可能性は大きいと思います。まさにシルバー投資のチャンスではないでしょうか。

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- (ゴールドとシルバーの過去2年間の価格の動き)
以上