前回4,000ドル台から5,000ドル台に上抜ける過程では、レバレッジを利かせた投機筋が先行。
一般投資家が一斉に、出遅れ意識を強め、「FOMC」と呼ばれる現象で、追随した。

それに対し、今回の金上昇過程は、徐々に底値を切り上げているので、底堅い。

プロの視点では、上げのカタチが良い。
何が違うのか。
「ドル不安」にしても、今回は具体性を伴うからだ。

前回は、教科書的な「基軸通貨ドルへの信認低下」が語られた。
ディベースメント・トレードというような用語に、メディアが飛びつき、流行り言葉になった(そもそもディベースメント・トレードは仮想通貨の世界から囃された言葉なのだが)。

しかるに、今回は、事実的背景がはるかに重い。
量的ドル不安と質的ドル不安が、同時進行しているので、具体性があるのだ。
量的には、米国公的債務40兆ドル。
その背景には、米経済の司令塔ともいえる、ウォーシュFRB議長とベッセント財務長官へのマーケットの疑義が質的要素として指摘できる。

ベッセント氏は、ドル円介入に続き米国債介入に踏み切ったが、いずれも効果は一過性。円買い介入では、通貨ペアとして、ドルを売れず、ユーロを売るという変形介入を強いられた。

財務長官自身が、ドル売りリスクを最も痛感している、という現実が透ける。

ウォーシュ氏は、金融政策に関して、FRBが、むやみに情報を発することを避ける方針を明確にしている。彼らが、語れば、市場は乱高下するから、まずは、市場に動いてもらって、FRBは、それに対して「金融政策」の方向性を決めるスタンスである。

しかし、この方法は、かえって市場の不透明性・不安感を煽ってしまう。ドル不信に拍車をかける結果になる。

更に、為替介入直後、ベッセント氏は、米国債買い戻しという米国債市場の異例の介入(買い支え)を実施した。元ヘッジファンドで市場を知り尽くした同氏ゆえ、市場は、注目したが、結局、時間稼ぎ・一時的効果に終わった。

この事例は、元プロでもドル不安を収束できないことを市場に印象づけた。
そこで、ドルの代替通貨であり、無国籍通貨とも言われるゴールド見直し機運が高まった。

全て「事実」に基づくドル不安ゆえ、生々しい現実味があり、単に投機マネーだけではなく、正統派のポートフォリオ運用のマネーも金買いに動き始めた。

金買いは、ベッセント氏とウォーシュ氏に対する不信任票といえる投資行動だ。

投機筋と異なり、派手さはないが、ずっしりくる買いでもある。
前回とは明らかに異なる。
更に、具体性ある一連のドル不安が、世界の中央銀行金購入機運をいやがうえにも高めることであろう。

結局、トランプお気に入りの若頭二人、ベッセント氏とウォーシュ氏という具体的人物が、ドル不信を煽るという、皮肉な結果になりつつある。

今週後半には、ジャクソンホール中央銀行フォーラムでウォーシュ議長が登壇する。果たして何を語るのか。

いっぽう、ベッセント氏は、あちこち、テレビ生出演して、自らの政策を擁護することに必死の様相だ。


今週も連日、新たな発言・イベントが市場を揺らすことになろう。