日本金融当局は今年2回目の為替介入に踏み切った。
瞬間的に157円まで円高が進行したが(157円を円高と言うのも抵抗感があるが)、既に160円台を回復。
今後、介入第二弾があっても、結局、162円前後に落ち着くと見る。
本欄で繰り返し述べてきたように、今年の円安は昨年に比し「筋が悪い」。昨年は円キャリートレードという投機的手法が世界の投機筋の間で広まったことが最大要因であった。
ゆえに、投機筋にお灸をすえれば、慌てて円売りポジションが手仕舞われ、140円まで戻す局面もあった。
しかるに、今年は、米イラン紛争が激化するなかで、世界的に「有事のドル買い」が進行中。更に、FRB議長がウォーシュ氏に変わり、物価安定を最優先させるための「利上げ」の可能性が強まり、金利差でも、ドル金利>円金利の状況で、金利差も拡大中だ。
日本側も、中東緊迫を受け、原油を中東からの輸入に依存する体質が露わになり、円がアキレス腱を露呈した。
しかも、高市政権は、消費税減税に動いている。
世界中で誰が見ても、公的債務比率が高い日本ゆえ、「財源はどうするの」。
日本政府の財政規律が懸念され、結局、円を刷りまくる結果になりはしないか、との疑念が強まった矢先に、力づくで、円買いをサポートしようというのだから、「全くマーケットの空気が読めていない」日本政権と言われてしまう。
中東情勢や米国中央銀行FRBの金融政策の流れに逆らって、日本からNY市場に出張り、アウェーの介入を実行せざるを得なかった。
米国財務省の同意も得ているが、NY市場の実勢は変わらない。
日銀が0.25%程度利上げしたところで、焼石に水。
そもそも、長期的為替水準は、日本企業と米国企業の稼ぐ力の差で決まる。巨大ハイテク・AI関連企業を多数抱える米国市場に比し、日本企業は、とにかく「粒が小さい」とNY市場では言われている。
この大差は、一朝一夕で変わるものではない。
今、外為市場で起こっていることは、日本経済の身の丈に合った円相場を模索中、という現象なのだ。
折あしく、熊本では、大地震の惨劇。地震国の弱点を再度、見せつけられた。
東北大震災時には、日本企業が海外に保有している円を日本に戻す、所謂「レパトリ」が生じて、円高に振れた。
円には「安全通貨」のレッテルが貼られ、「世界経済が揺れると、マネーはリスク回避のため円に集中する」との「円高神話」が語られた。
その神話は既に崩壊した。
NISAでも、世界の企業に投資する投資信託が人気で、肝心の日本株投資は盛り上がらない。
この日本人の円安マインド、日本国の円安体質を変えるのは、容易なことではない。時間もかかる。
金が買われるのも、国民が保有する資産が自国通貨安で目減りするリスクに対するヘッジの要素が強い、ともいえよう。
筆者は「金は買って役立たないのが一番」と説いてきたが、「役立ってしまう」時代が続きそうだ。


