昨日は早朝の重要イベントFOMC後、NYの仲間たちとのZOOM会議など諸々長引き、ブログ更新の余裕がなかったが、(殆ど寝てないよ~)その間、NY金市場では、ウオーシュ新FRB議長が、同氏流に短縮された記者会見にて、強い表現で(雇用安定より)物価安定こそがFRBの最重要使命と断言したことで、俄かに、「年内利上げあるか」ではなく、「年内利上げは何回か」にまで市場の関心が進んでしまった。

 

金利が付かない金には、強い逆風。金価格も4,200ドル近くまで急落した。(KITCO72時間グラフ↑赤線)しかし、昨日のアジア時間に、米イラン署名合意の報道が流れ、再び4,300ドル台回復(同じく赤線)。FRB発の売り要因と中東発買い要因が拮抗した結果、膠着していた4,300ドル攻防の域を出なかったのだ。

 

しかし、昨日の欧米時間になり、国際金価格は再び下落基調となり、本稿執筆時点の日本時間金曜午前には、4,200ドル台を割り込んでいる(緑線)。

 

やはり、ウオーシュFRB新議長の影響のほうが、強いとの成り行きだ。

それを端的に示すのが、FED WATCHと呼ばれる「市場が見る米政策金利の確率」。

現時点では、年内「利下げ確率」が消え、「利上げ確率」それも、利上げがあるかないかではなく、「利上げが何回あるか」にシフトしていることだ。

具体的には、執筆時点で年内利上げ1回の確率が36%、2回が34%、3回が13%。

FOMC前は、ゼロ回説か1回説が、圧倒的であったので、これは「急変」といえる。

 

NYとのZOOM議論での話題は、「ホルムズ海峡開放で原油下落すればインフレ率も下落するのでは」というポイントだ。

 

ここからは、少々専門的な物言いになる。

 

これまで懸念されていた米インフレは、原油価格上昇が引き起こした「コスト・プッシュ」型インフレ。しかるに、FRBが懸念するインフレの実態はもっと根が深い。ガソリンスタンドの価格が上がっても、米国GDPの7割を占める個人消費は底堅い。

 

例えば17日発表の米小売売上高は、4か月連続の増加を見せた。このような経済指標を見せつけられると、物価安定最優先のウオーシュFRBは、demand pull(ディマンド・プル)型のインフレを抑制せねばならない。

AI関連、スペースX上場などに陶酔する株式市場で大儲けした個人投資家たちが、「資産効果」により、おカネを使いまくることなどが一例だが、それにより需要過熱が生じるシナリオだ。

結果的に、米インフレは、ウオーシュ氏の発言を引用すれば「過去5年間、FRBは2%のインフレ目標を達成できなかった」(これは前任者パウエル氏への強烈な批判)ことになりそうだ。

 

イランとの覚書が署名されても(筆者には、これとて中間選挙を意識した60日間の時間稼ぎにしか見えないが)、パウエル前議長が残した負の遺産を、新議長は、「断固たたきつぶす」というニュアンスの表現で語り胸を張った。筆者は、彼の記者会見を深夜、米経済テレビ生中継で一部始終見ていたが、実に迫力のある場面であったよ。

 

Sticky(粘着質が強い=しつこい)インフレに対峙するには、利上げが「必須」となる。

 

更に、金市場と、これは株式市場も懸念していることだが、ウオーシュ氏はQT(量的引き締め)に前向きなことも重要だ。

 

QE(量的緩和)でバラまいたマネーの回収である。ウオーシュ氏は、米国債を買いまくったFRBの「肥大化」を批判してきた。そこで、スリムになるためには、買い取った米国債を民間市場に戻し、その対価として、民間の「過剰流動性」を吸い上げることになろう。株も金も、投機マネーの参入により、「流動性相場」の色合いが強いので、QTは、相場の「短期的」売り要因として無視できない。

 

但し、言っておくが、あくまでカネ余りの落とし子である投機マネーが退出するだけで、金市場の中長期マネーは、暴れ者(=短期運用型ヘッジファンド)が減れば、市場の体質が筋肉質になるので、歓迎するところだ。その過程で金価格が下落しても、中長期目線では動じない。

 

外為市場では、ウオーシュ氏デビュー後、利上げ観測=ドル金利高によるドル高(円安)が161円を突破して進行中だ。いずれ為替介入第二弾となり、それも再び失敗して、165円程度まで円安が中期的に進行することになろう。今や、ウオーシュ氏は、日本の介入当局(財務省・日銀)にとって、意図せざる敵役になってしまったね。

 

そこで、有事のドル買い、金売りなどが語られるが、これは、まず、投資家が米ドルを不安なく安心して買っているからではない。金利差などを理由に一儲けしたい人たちがドルを買っているのだ。同様に、金は金利がつかないことによる「金利差」を理由に一儲けしたい人たちが、「有事の金売り」を囃し、売ったまでのこと。ドルへの不信感(歴史的ドル離れ傾向)は消えるどころか、トランプ自作自演のイラン戦争により、益々強まっている。

 

長期的な視点では、金を買うという投資行動は、基軸通貨の座に甘える米ドルへの、不信任投票なのだ。特に日本人にとっては、自国通貨安ヘッジとしての、金保有という意味合いが益々強まっている。