日経が「2025年度、日本からの金輸出額が4兆円を超えた。密輸された金地金の海外への流出の可能性が指摘される」と書いた。

昨年も同様の記事が出て、筆者がコメントしたので、覚えている。

これは日本独自の金買い取り時の消費税還付制度を悪用したものだ。
店頭買い取り価格には、必ず「10%税込み」の数字が提示される。
そこで、主として香港あたりから、税関申告せず日本に持ち込まれた金地金を、買い取り店で売却すれば、10%儲かるということになる。

世界で、このような消費税還付制度を採用している国は日本だけだ。従って、「密輸業者」にとっては、ジャパンは「おいしい国」となる。日本の輸出入統計には、輸入に比し、異常に多い輸出額が計上される。日本税関も「これは密輸」と断定している。

しかし、この密輸業者あるいは密輸システムは殆ど摘発できていない。
おそらく、個人があれこれ手を使って、税関をすり抜けるか、或いは、大きな密輸組織グループが存在するのか。

筆者は前者だと見ている。

昔から、日本近海で、船から船へ金地金を移し替える事例は指摘されてきた。筏の下に金地金が吊るされ、流される事例もあった。韓国から日本へのフェリーで、金地金を持ち込む手口もあった。いずれも、大元は香港と言われた。あの手この手で密輸入する結果、年々、金価格高騰もあり、金額が膨大に膨らんでいる。

結果的に、日本は金の大輸出国となったわけだ。
その間、正規の業者は、顧客からの買い取りより、顧客の購入のほうが多い状況が続いている。

そもそも、金地金は溶解してしまえば、正規か非正規か、見分けることは不可能だ。非正規ルートの金が正規ルートに混じり込む可能性もゼロではない。これは、誰も証明・断定できない。

密輸に関しては、中国・インド・中近東地域では、税金制度を利用するのではなく、長い国境線を越えて、金地金が非正規ルートで持ち込まれることが常態化している。

筆者が、ワールド・ゴールド・カウンシルにいたときも、金需給統計のなかで、密輸量の把握が、難しかった。というか、不可能であった。それでも、総金供給量と総金需要量をex post(事後的)に同じ数字にせねばならない。

結局、世界各地域から報告される需給の数字をボトムアップでまとめ、必ず生じる、総需要と総供給の差は、「投資需要と見做す」ことにしている。

それゆえ、筆者は、発表される金需給統計の数字を、トン単位で細かく見ることはない。まぁ、正確なのは、上場している金鉱山会社の生産量程度とか金ETFの売買量くらいか。

中央銀行金保有量も、中国やサウジアラビアでは「隠れ外準」(発表しない外貨準備)の存在が当たり前の国柄ゆえ、公表より多いことは間違いなかろう。

そもそも、末端の宝飾需要など、現地の無数の各店舗からの聞き取りアンケート調査に依存せざるを得ない。そこで、中国やインドの小売り業者が、正確な数字を報告するか否かは疑わしい。適当な数字を書き込みがちだ。彼らとて「正確に金純分が何キロ分を売って、または、買い取ったか」など、把握できるはずもない。

まして、そのなかで、どの程度が、密輸金であるかなど、「知ったことではない」。最近、インドが金に対する課税を強化したが、これとて、密輸入を増やすだけのことになろう。

こう見てくると、日本の事例は特異な現象といえる。とはいえ、日本の海岸線も長いからね。海上保安庁が頑張っても、摘発には限界があるよ。
今後も、金密輸の問題は新聞の特に社会面をにぎわすことになろう。