金ETFは、そもそも、年金基金の要請で作られた金投資商品であった。

年金が金を買うにあたり、必要条件は、まず、現物であること。
そして、有価証券で上場され、いつでも売買されること。

この二つの命題を満たす商品として、金ETFが誕生したのだ。

既に、米国の年金基金は、金ETFを買っている。
日本も同様だ。筆者の最近の仕事は、年金関連が急増中である。投資家相手のセミナーに比し、スモール・ミーティングの形式ゆえ、目立たない。目立つことを嫌う業界でもある。

そもそも超長期に渡り、運用資産価値を維持する必要がある年金基金にとって、金は恰好の商品なのだ。

日米ともに年金業界は保守的で横並び。大手が動けば、他も追随する。筆者がまず尋ねられることは「金が上がるか下がるか」ではなく「よそさんは、どうなんでしょうか」。自社だけがやっていない、或いは、自社がフライング気味に始めた、という状況を嫌う。

米国では最大の公的年金カルパース(カリフォルニア州職員共済年金基金)の元CEOが、WGCにリクルートされ、金ETF商品開発を始めた経緯がある。カルパース・モデルともいわれる彼らのポートフォリオは、他州にとって、お手本なのだ。

そのような環境下で、昨年以来の金高騰が起こり、「金を持たざるリスク」が気になるのだろう。

日本のサラリーマンも、自分は金を買っていなくても、企業年金が金を買っているというケースが、これから増えそうだ。

更に、筆者が興味を持つのは、GPIFが金を買うことが考えられるか。
年金積立金管理運用独立行政法人。
別名「市場のクジラ」。

基本的に、日本株、国内債券、外国株、外国債券で運用しているが、このクジラが、少しでも金を買えば、金市場にとっては、大きな量になろう。なにしろ、運用総額が277兆円に達する世界最大級の「クジラ」なのだから。

実は、筆者がワールド・ゴールド・カウンシルに在籍していた頃、日経の全面意見広告で、若杉東大教授(当時の公的年金運用分科会長)とのディスカッションを載せたこともある。

いまや、中央銀行が金を買う時代。
公的年金にとっても、金を買うハードルは徐々に低くなりそうだ。