今日は、改めて、金とプラチナの違いについて考えてみよう。

1)    金は産業用・宝飾用にも使われるが、主要な需要は、投資用。更に、中央銀行の外貨準備としての購入である。対して、プラチナは、自動車排ガス清浄化触媒と宝飾に使われる。外貨準備でプラチナを買う国はない。

2)    プラチナは景気後退や物価上昇(インフレ)が起きると、実需は減るが、金は、景気後退局面で、「安全資産」として資産運用の対象となる。

3)    市場規模が、プラチナは金の1/20である。それゆえ、希少性はプラチナのほうが高いが、市場が小さいので、投機マネーの影響も大きく受けやすい。

では、今後のプラチナ相場はどうなるか。
キーワードはスタグフレーション。景気後退と物価上昇が同時に起こる現象だ。ここは、金の独り勝ちと、本欄では繰り返し書いてきた。しかるに、プラチナはスタグフレーションになれば、実需は激減する。
更に、金は外貨準備として年間1,000トンペースで買われている。国が自国の経済安全保障のために購入するので、30年、40年と長期に渡り保有する。退蔵といってよいであろう。それゆえ、金価格の価格レンジは、退蔵された分だけ、確実に切り上がる。

しかるに、プラチナの購入主体は、プラチナを退蔵せず、産業用・宝飾用に使い、更に、ここが重要なことだが、ヘッジファンドの投機売買の恰好の標的となる。市場が小さいので、価格が大きく乱高下するからだ。
今年は、プラチナ価格が、1,000ドル前後の水準から短期間に1,500ドル近くまで急騰した。価格が短期間で5割も上がるほどの需給の大変化があったのか。南アの鉱山の生産に障害が生じたことや、中国の一部の人がプラチナを買った程度の話で、5割も価格が上がることは考えられない。実態は、ヘッジファンドなどの投機買いだ。「プラチナ実需逼迫」を囃し、一般投資家の買いも誘い、首尾よく5割近くもプラチナ価格を強引に引き上げたところで、一転、利益確定売りに転じた。これが現在のプラチナ市場の実態だ。
未だ、高値掴みした投資家・投機家が逃げ遅れて、焦っている。
更に、プラチナを既に長く保有してきたひとたちからは、「やれやれ売り」が出始めた。彼らにとっては、千載一遇の売り処分のチャンスと映る。

筆者は、本欄で繰り返し述べてきたように、プラチナが個人的には大好きである。しかし、プロとしては、ここは、冷静に現実を見なければならない、と自戒の意味も込め、語っている。プラチナ需給の数字が、PR機関による調査であることも、はっきりいって、気に入らない。

結論として、金は2026年には4,000ドルを試すと思うが、プラチナは1,000ドルまで、つまり、以前の常態まで戻る可能性がある。
それでも、プラチナの持つプレミア感は変わらないであろう。プラチナカードのステータスはゴールドカードより格上が当たり前なのだ。それで良いではないか。中国人の金に対する文化的選好度の高さも変わらない。銀色好きの中国人もいるが、紀元前4世紀から金貨が使われてきた歴史的事実は重い。その詳細は以下に纏められている。
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