
3,500ドルの瞬間タッチ後、3,300ドル近辺まで暴落(緑線)。
24時間グラフの目盛りも3,300、3,350、3,400、3,450、3,500と50ドル刻みだ。昨日は、本欄で、金価格暴騰に対して「懸念」と書いたが、そろそろ、当面の天井が見えてきた。
昨日は、ベッセント財務長官の「米中の関税合戦のエスカレートを回避する道を模索せねばならない」との発言とトランプ大統領が一転して「パウエル氏を解任しない」と述べたことが金売りを加速させた。しかし、基本的に、自由貿易から保護貿易へと時代が転換した今、米国例外主義の構図は崩れ、国際基軸通貨としての米ドルへの信認希薄化傾向は変わらない。
筆者は、今後のベッセント財務長官発言に注目している。トランプ政権内の穏健派として、トランプ氏の刺激的な発言を和らげ、株式・外為・債券市場の無用な混乱を最小限にとどめるべく、示唆的な表現で市場とのコミュニケーションを図ってきた。マーケットに対して友好的な姿勢を市場も評価。政権にとっても市場にとってもマイナス効果しかない米国売りの波も徐々に鎮静化の兆しを見せている。困ったときのベッセント頼み、ベッセント・プットなどの表現が今後、NY株式市場では使われそうな成り行きだ。
とはいえ、政権内部では、強硬派ナバロ通商担当上級大統領顧問との対立も激化しよう。ナバロ氏も、メディアに登場するが、司会者の質問を遮り、ひたすら持論をまくしたてる。柔らかな物腰のベッセント氏との対比が鮮明だ。ホワイトハウス内でトランプ氏最側近として、大統領の信頼が厚いナバロ氏はマーケットが最も警戒する人物である。
かくして、今後のトランプ発言も常に想定外のリスクを孕み、市場側は、慎重な姿勢を続けざるを得ない。そのなかで、「金市場」に関しては、安全資産としての金買いという基調は変わらない。但し、その上げのスピードが異常だ。金を保有したいのではなく、短期売買益が欲しい連中が暴れているのだ。だから、筆者は懸念を抱く。
当面、3,300-3,500という広いレンジで、ジェットコースター相場が続きそうだ。
なお、円高が続いているので、円建て金価格には下げ圧力がかかるが、ドル建て金価格の変動幅が、為替の影響を上回る。