
金価格は順調にロコロンドンで2,940ドル台まで来た。
ひとえに、トランプ・リスク(以下に詳述)に尽きる。個人的には、じっくり時間をかけて2,900ドルを固めたうえで3,000ドルに到達してほしいところ。まぁ、そう思い通りにはゆかないことが多いけどね。贅沢な悩みというものだ(笑)
さて、以下は、筆者の見るトランプ・リスクに関する論文。
自由貿易理論は「譲歩の精神」を前提に成り立つ。各国が「比較優位」を持つ得意分野にリソースを重点配分して、不得意分野は他国に譲る。その結果、世界経済のパイが増える「拡大均衡」になる。
対して、保護主義が席捲すると、自国が比較優位を持たない分野まで関税で守り、更に、売られた喧嘩を買うと言わんばかりの報復関税を発動。その結果、各国の経済が痛み、マクロで見た世界経済は「縮小均衡」に陥る。そのような経済環境で、長期の世界的株価上昇は望めない。
長期積立のNISA投資家にとっては「悪魔のシナリオ」である。オール・カントリー(世界各国)の景況感が悪化すれば、主力NISA投資商品から、どれほどのリターンが期待できるのか。そもそもNISAは「投資の利益」への課税を優遇する制度だが、「損失」となれば「優遇」どころではない。
個人投資家からは、「トランプ政権の4年間は、NISA投資を中断したい」などの本音が聞こえてくる。
以下は、筆者のトランプ政権に関する諸々の所感だが、まず、今回のNY株式市場では「万年ブル」と言われた著名投資家まで、言葉を濁す、異様な風景が展開されている。株価下落の恐怖というより、トランプ氏の本音が読めないので、モメンタム(勢い)に乗って積極的に売買するアニマル・スピリッツが明らかに萎えている。
一般的に、相場に絶対はないと言われるが、トランプ氏の本音を正確に読める人は絶対に世界に誰もいない。なにせ、トランプ氏が、どうなるか、読めていないのだから。
更に、トランプ氏の取り巻きからの雑音も、やかましい。ベッセント財務長官は「トランプ・プット」は期待できないと市場に釘を刺した。今回は「トランプ・コール」になろうと言う。株価が下がったときの助け舟が、プットで、株価が上がったときに、流れを囃す応援団となるのがコールというわけだ。
加えて、財政政策の司令塔であるベッセント氏と、通商問題を司るラトニック商務長官の不仲も顕在化している。そもそも、ラトニック氏は財務長官ポストを狙っていたが、ベッセント氏が、フロリダのトランプ邸に陣取り、首尾よく財政長官ポストを手にして、ラトニック氏が地団太踏んだなどと報道された経緯がある。ライバル関係から、かなり激しい言葉が交わされたと言われる。
株式市場で、この二人の相反する如き発言が流れた場合に、マーケットはかなり混乱しよう。日本流にいえば、「殿ご乱心」と将軍を諫める老中がおらず、マスク氏含めて、老中の間では、感情のもつればかりが目立つ。出入り業者の政商たちを想起させる米大企業トップの多くも、トランプ氏が同席しない場で、うっぷんを晴らす如き言動が目立つ。
最後に、対中強硬派のピーター・ナバロ氏も、通商担当大統領補佐官という肩書で、滑り込み最後の入閣者となったが、ホワイトハウスの司令塔オーバル・オフィスの内部に陣取り、トランプ氏との物理的距離が近く、個人的信頼も厚いので、要注意人物みて、筆者は言動をフォローしている。