以下は2023年1月12日付本欄の採録である。
日経新聞が中国の金事情を現地取材3回連続で報じているので、ここに、改めて、筆者の見解を記しておきたい。
長年の読者であれば、筆者は長期的に中国の公的金保有が5,000トンに達すると予測してきたことを思い出すであろう。
長期的に金価格3,000ドル論の根拠として位置付けている。
その背景として中国は金を通貨政策と資源政策の両面で重視している。
まず通貨政策の面では断トツで世界最大規模の外貨準備のリスク分散として公的金保有を長期的に増やしている。
外貨準備の半分以上は米国債ゆえ通貨ポートフォリオとしては米ドルに偏り過ぎているからだ。
更に米ドル一極集中の通貨覇権に人民元と金で楔を打ち込む意図が感じられる。
そもそも金を買うことはドルへの不信任票だ。
更に国内事情も重要だ。
紀元前から金貨が使用されていた国ゆえ金こそ価値の基準との発想が民族のDNAに刷り込まれている。
それゆえ国民の人民元への信頼感は希薄だ。
人民元は通貨の世界では所詮新参者と考える風潮が目立つ。
しかも中国は第二次世界大戦後にハイパーインフレを経験している。
写真は上海の銀行博物館に展示されていた額面60億元の紙幣。
1949年発行である。
丸窓には60億元の購買力として米一握りが陳列されていた。
因みに博物館でその裏に展示されていたのが紀元前に使われていたという金貨であった。
そのような金選好度の高い文化的背景もあり、現代でも外貨準備としての公的金保有を長期的に増やしてゆく長期的戦略なのだ。
次に資源政策としての金備蓄。
金にはスマホ製造などには欠かせない産業用貴金属の面もある。
それゆえ中国は国家として金の備蓄を増やしている。
金を生産国から直輸入するため習近平主席が直接アフリカに出向き希少資源確保に動いている。
そもそも上海に黄金交易所を創設した時に国民が金を資産として保有すれば中国国内の金のストックは増えるとの発想で投資家の金へのアクセスを強化した。
筆者はその金取引所のアドバイザリーも務めたことがあるのだが、そこでは中国国境内に住む中国国民に資産として金を保有させれば、それが実質的な金備蓄になるという発想であった。
全体主義国家で取引所トップ3名はいずれも中国共産党からの天下り。
いざとなれば国民から金を供出させればよいとの考え方であった。
そのための金取引所創設だったのだ。
更に金地金で国民に持たせれば長期保有するので、浮動マネーが不動産投機などに走る傾向を抑制できるとの読みもあった。
なお、人民元を国際通貨として定着させることも習近平主席の悲願だ。
そのためにIMFのSDRを構成する国際通貨として米ドル、ユーロ、円、ポンド、そして人民元を正式に認知させた。
冒頭に述べた如く、金と人民元で米国の通貨覇権一極集中に対抗するとの姿勢が透ける。
そもそもユーロ誕生も米ドル通貨覇権に対する挑戦であった。
対米戦略という次元では中国もロシアも共闘に異論はない。
いざ米中通貨戦争になれば、中国は公的保有の米国債を投げ売り、ドル金利急騰を誘発することができる有力な武器となる。
さて、今日の写真、札幌で食する山梨産(産地直送)の新鮮な桃も、おつなものですぞ~。
「モモ」といえば、私の愛猫の次女格の名前だった。
捨て猫で、最初の頃に、思いっきり手を噛まれた跡がいまだに残っており、思い出すと、しんみりしてしまう。