NY金価格が2,300ドル台で健全な調整局面に入ってくれたことで、あとは、為替要因が重要になる。
そこで、今日は、155円を突破した円安の今後について詳説する。
国際通貨投機筋は、日銀金融政策決定会議の前日を狙い、防衛ラインとされた155円を突破した。
彼らに勝算はあった。25日には米国GDPが発表され、米国経済好調というドル高要因が見込める。
更に、26日にはFRBが最も重視するPCE物価指数が発表される。ここでも米インフレ指標1~3月連続上振れの流れに歯止めがかからないことが予想される。
前月比で「変わらず」でも、インフレの粘着性と解釈されそうだ。
更に、4月30日から5月1日の日程で、FOMCが開催される。
今回は、パウエル議長が、既に手の内を晒している。
4月16日に「最近の経済データにより、明らかに(インフレ目標達成の)自信が持てなくなり、その自信を得るまでにいまだ時間がかかる」と、それまでの見解を覆したからだ。
今や、「年内利下げ見送り」が極論かと思えば「今後12か月以内に利上げ再開」のシナリオも出てきて、その確率が20%に達している。
かたや日銀の追加利上げは、今回見送られる可能性が強く、今後、実行されても、せいぜい0.25%程度と見られる。
対して、FRB側は、5.25%~5.5%の現行政策金利水準を「高く、長く」維持する姿勢が鮮明だ。
更に、データ次第ではダメ押し「利上げ」の可能性さえ絵空事と片づけられない。
このような状況下で開催される日銀会合では、植田総裁が語れば語るほど、金融政策選択肢の限界が露わになるだけとなろう。
ワシントン訪問時にも、英語で「利上げに踏み切る可能性は非常に高い」と明言したが、かえって、利上げ幅の限界をNY市場に意識させる結果になった。
NY市場主導の155円突破ゆえ、「アウェイ」の為替介入でどこまで円高方向に動かせるか。
もはや介入あっても150円程度とは、国際通貨投機筋の読みだ。
彼らは、140円台半ばから155円まで円売りポジションを積み上げてきたので、150円なら、一部利益確定の水準ゆえ「凌げる」と見ている。
更に、介入が一巡すれば、ドル買い・円売り再開の目論見も透ける。
中期的な市場の潮流も、昨年と異なる。23年の円安進行時には、FRBがいずれ利下げにピボット(転換)すれば円高・ドル安が見込まれた。
ところが、今年は、その利下げ予測が急速に後退している。
総じて、日銀会合前までに日本金融当局は為替介入に動かなかったことで、結果的にルビコン川を渡ってしまったようだ。