今日の話は中級者向けになる。
今回のFOMCで、NYの市場が特に注目したことは、11月利上げ支持派が19名中12名もいたこと。更に、これは重要なことだが、名目政策金利ベースで、24年の利下げ回数予測が4回から2回に減ったことだ。その切り下げ幅は0.5%程度となる。これが、市場にずっしり応えたのは、名目では利下げでも、実質政策金利ベースでは利上げになることだ。
インフレは減速を見込むのに、名目政策金利は「より高く、より長く」のFRB基本方針は変わらない。名目金利を5%以上の水準に、出来るだけ長く、場合によっては24年後半まで留め置く方針だ。ぶり返しやすいインフレを根絶やしにするという強い意志が感じられる。それゆえ、利下げへの転換に関しては、極めて慎重な姿勢だ。


更に、具体的数値で検証すると、FRBが最も重視する「コアPCEインフレ率」は、23年は3.7%、24年は2.6%に引き下げられた。しかるに、FOMC参加者の金利予測では、24年末の名目政策金利の中心値は、4.875%から5.125%の中間にある。その結果、名目政策金利からインフレ率を除いた実質政策金利は、23年より24年のほうが高いことになる。インフレは順調に減速を予測しても、実質政策金利は利上げとなるわけだ。
FRBの視点では、利下げに転換しても、その後、インフレが再燃することが、最悪のシナリオだ。それゆえ、予想インフレ率に低下が見込まれても、実質政策金利はプラス圏に止め置き、景気抑制的な「保険」をかける政策意図なのだ。


記者会見でも、米経済紙記者に「議長とウイリアムズNY連銀総裁(副議長格)はかねてから、実質政策金利を重視してきたが」と話題を向けられるとパウエル氏は「実質政策金利を景気抑制的な水準に維持することが重要と理解している」と答えていた。これは、実質政策金利をプラス圏に置くことを意味している。
市況の法則として、プラスの実質政策金利は、株式市場に逆風となり、外為市場ではドル高(円安)加速要因となり、ドル建て金価格には下げ要因となる。
国際金価格は、FOMC前に、投機的ドル金利下落で急騰したが、実際に、FOMC声明文発表とパウエル議長記者会見になり、急落した。(KITCOグラフ赤線)
 

kitco

円相場は、20日の欧州時間寄り付きにかけて、148円を突破した後に、147円台後半まで戻していたが、パウエル記者会見中に148円20銭水準まで再度円安が進行するに至った。


最近のNY市場では、ドル高の話題になると、円安の荒い値動きが目立つので、引き合いに出されることが多い。そもそもドル高をNY株式市場は素直に歓迎できないので、日銀記者会見への注目度も高い。国際通貨投機筋もしきりにチェックを入れてくるので要注意だ。