大手格付け会社フィッチは、1日米国債格付けをトリプルAからダブルAプラスに引き下げた。
今後3年間で予想される財政悪化や、債務上限問題を巡る政治の理由を挙げている。
しかし、唐突な動きで、不可解である。
この突然の米国債格下げのニュースに、時間外のNY市場は、唖然として、さすがの短期投機筋も消化しかねている。
米債券市場の地合いとしては、2日に8~10月の米国債の新規発行額が発表されるので、ドル金利には上昇圧力がかかりやすい。
債務上限問題により凍結されていた国債発行が一気に出て、幅広い年限での発行増となりそうだ。
今週は雇用統計が発表されるが、雇用増が20万人を超えると、労働市場の過熱が意識され、金利上昇を誘発しやすい。
1日に発表された6月の雇用動態調査(JOLTS)で求人件数が958万件と前月比では減ったものの、基本的には高止まりであった。
なお、米国債市場の流動性はダントツであり、安全性を求めるマネーが安全資産として米国債を購入する傾向は変わるまい。
911同時多発テロのときも、真っ先に再開したのは米国債市場であった。
更に、円も安全通貨神話が崩れた。スイスフランは、市場規模が小さすぎる。
そして、金だが、前回の米国債格下げ時には、急騰を演じたので、今回も、上げの要因となろう。
安全資産のライバルである米国債がオウンゴールで、金チームが得点という成り行きだ。
中期的展開としては、他の格付け会社の動きが注目されよう。格付け業界も独自の複雑性があるので、ライバル機関が、即、追随することはなさそうだ。
米国財政問題は重大だが、債務上限問題が暫時妥結した後なので、切迫感に欠ける。
但し、米国大統領選を控え、政治的要因が読み切れないので、潜在的サプライズ性は無視できない。
金市場を見るうえで、年末にかけ、金融政策動向に加え、財政問題にも目配りする複眼構造が必要となろう。
特に、格下げによる「悪い金利上昇」と、米経済活性化による「良い金利上昇」を見極める必要があろう。
長期的には、米ドル通貨覇権に対抗する中国・ロシアという「対決の構図」は変わらない。
とはいえ、中国は日本に次ぐ、米国債保有大国なので、米国債が通貨戦争の武器にもなるのだが、中国が米国債を大量に売却すれば、ドル金利急騰で、中国も大損を被ることになる。
そして、米国債を保有する「セイホ」「GPIF」の出方もNY市場では注目されよう。
このような状況では、米ドルを回避して、公的金購入が加速するキッカケにもなろう。
さて、今日の写真は、農園レストラン、アグリスケープで、新鮮な野菜に囲まれ、黒豚を見学して、ご機嫌の筆者(笑)