中国は金を通貨政策と資源政策の両面で重視している。
まず、通貨政策の面では、断トツで世界最大規模の外貨準備のリスク分散として、公的金保有を長期的に増やしている。
外貨準備の半分以上は米国債ゆえ、通貨ポートフォリオとしては、米ドルに偏り過ぎているからだ。
紀元前から金貨が使用されていた国ゆえ、金こそ価値の基準との発想が民族のDNAに刷り込まれている。
それゆえ、国民の人民元への信頼感は希薄だ。
人民元は、通貨の世界では、所詮、新参者と考える風潮が目立つ。
しかも、中国は第二次世界大戦後に、ハイパーインフレを経験している。
写真は、上海の銀行博物館に展示されていた額面6億元の紙幣。
1949年発行である。ちなみに、博物館で、その裏に展示されていたのが紀元前に使われていたという金貨であった。
そのような金選好度の高い文化的背景もあり、現代でも、外貨準備としての公的金保有を長期的に増やしてゆく長期的戦略である。
次に資源政策としての金備蓄。
金にはスマホ製造などには欠かせない産業用貴金属の面もある。
それゆえ、中国は国家として金の備蓄を増やしている。
金を生産国から直輸入するため習近平主席が、直接アフリカに出向き、希少資源確保に動いている。
そもそも、上海に黄金交易所を創設したときに、国民が金を資産として保有すれば、中国国内の金のストックは増えるとの発想で、投資家の金へのアクセスを強化した。
筆者は、その金取引所のアドバイザリーも務めたことがあるのだが、そこでは中国国境内に住む中国国民に資産として金を保有させれば、それが実質的な金備蓄になるという発想であった。
全体主義国家で取引所トップ3名はいずれも中国共産党からの天下り。
いざとなれば、国民から金を供出させればよいとの考え方であった。
そのための金取引所創設だったのだ。
更に、金地金で国民に持たせれば長期保有するので、浮動マネーが不動産投機などに走る傾向を抑制できるとの読みもあった。
なお、人民元を国際通貨として定着させることも、習近平主席の悲願だ。そのためにIMFのSDRを構成する国際通貨として米ドル、ユーロ、円、ポンド、そして人民元を正式に認知させた。
金と人民元で、米国の通貨覇権一極集中に対抗するとの姿勢が透ける。
そもそもユーロ誕生も米ドル通貨覇権に対する挑戦であった。
対米戦略という次元では、中国もロシアも共闘に異論はない。
いざ、米中通貨戦争になれば、中国は公的保有の米国債を投げ売り、ドル金利急騰を誘発することが出来る有力な武器となる。
そのドルと人民元の狭間で「円」の立場が相対的に弱まるは必定だ。
今の円安の根は深い。単に金利差だけで片付けられる現象ではない。
なお、本日日経朝刊グローバル市場面に「中銀、金買い最大ペース 300トンは『名乗らぬ買い手』 中国、『脱ドル』の動き加速か」との刺激的見出し記事が載っている。
本欄11月2日付「中銀の金購入量急増、中国の影も」で書いたことだ。
きっちり日経流に纏めている。
筆者がいささか驚いたのは、昨日夕方に、本件で、テレ朝の取材があり、以下の写真のごとく、今朝のニュース番組でOAされた。
先日の報ステでの0.75%利上げ解説といい、中銀の金購入といい、一般メディアが、経済ネタも、きっちり扱うようになってきた。
筆者の肩書も「米国金融政策に精通」から「仮想通貨専門家」から「金にも詳しいマーケットアナリスト」となった(笑)