北朝鮮ミサイル日本上空通過の報はNY市場でも潜在的地政学的リスクとして話題になっている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙も社説で論じた。
1962年、ソ連が核ミサイル基地をキューバに建設した「キューバ危機」を想起させ、キューバからのミサイルがフロリダ半島上空を通過するようなもの、と語る米軍事評論家もいた。


存知よりのニューヨーク金市場の若手トレーダーからも、「日本が北朝鮮ミサイルを撃墜することはないのか?」とストレートな質問が飛んできた。
目論見は透けている。
「有事の金」と囃して、レンジ上限の突破に動く腹積もりなのだ。
国際金価格は1,600ドル台で今年安値をつけた後、ドル金利・ドル相場反落により1,700ドルを再突破した。
しかし、その後が続かない。
なにか新たな材料を模索しているところに、北朝鮮ミサイルの報が飛び込んだ。
「有事の金」という、おあつらえ向きの買い材料になりうる、と読んだのであろう。
話せば、日本の平和憲法も知らず、日本に関する知見も極めて薄く、筆者はまともに対応する気にもならなかった。


なお、これは個人投資家への警告にもなる事例だ。
近年、金市場は地政学的リスクに反応しない傾向がある。
ドル高になると有事のドルとの声も聞こえてくる。
とはいえ、さすがに、ロシアが核兵器使用ともなれば、伝統的に金選好度の高いドイツ・スイスを中心に欧州金市場では「有事の金買い」の現実味が増すであろう。
しかし、一般論として、プロの感覚では、有事の金は売りである。
地政学的リスクは短命に終わることが多く、金を買い持ちなら吹き値売りの恰好の機会になるのだ。
過去の事例でも、イラク戦争開戦後に、金価格は下落した。
これは「噂で買ってニュースで売る」の典型事例であった。
金市場の「中東筋」が、あらかじめイラク開戦必至と読み、買いポジションを増やしていた。
そこに、開戦のニュースが飛び込むと彼らは一気に利益確定売りに走ったのだ。
いっぽう、有事の金の報を聞き、即新規買いを入れた個人投資家は高値掴みの憂き目を見ることになった。
そもそも、個人投資家にとって金は、有事に備え、平時から現物をコツコツを買い増しておくことが本筋だ。
その原点に筆者はスイスで遭遇したことがある。
たまたま同僚のスイス人トレーダーの自宅に招かれたとき、夕食後、奥さんが分厚いアルバムを見せてくれた。
そこには、娘さんの誕生日ごとに、誕生日の写真と一枚の金貨がページごとに貼られていた。
7歳だったので7つの成長の記録写真と、7つの金貨。
これを嫁ぐ日まで続け、嫁ぐ前の晩に母親が「嫁ぎ先になにかあったら、この金貨を売って凌ぎなさい」とのメッセージとともに娘にプレゼントするという。
トレーディングルームで金価格を売ったり買ったりの虚しい日々に明け暮れていた筆者は、これこそ、「有事の金」の原点だと感じ入ったものだ。
有事は、なにも戦争だけではない。
家庭内有事もあるのだ。
嫁ぐ娘を案ずる母の愛情がこもったアルバムを見て、感激。
目がウルウルしてしまった。
それ以来、筆者は、金には資産価値だけではなく、感情価値(センチメンタルバリュー)があると論じるようになった。
もし、そのアルバムに国債とか(当時の)株券が貼られていたら、どうであろうか。
金貨だからこそ、触れればヒンヤリするが、贈る側の熱い愛情が伝わる。
これこそゴールドの原点なのだ。


それにしても、北朝鮮ミサイル、日本上空通過の後で、韓国側からミサイル発射と続くと、かなりヤバイ雰囲気だよね。
自然な成り行きで日本国内でも「有事感覚」が強まっていることを感じる。
札幌サテライトオフィスでは、北海道で「ロシア侵攻危機」の論調も見受けられ、実際に、ロシア侵攻リスクヘッジのため金を買う事例も複数耳にした。
沖縄・九州では、台湾有事の流れ弾が気になる。
日本海側では、北朝鮮ミサイルが特に気になる。
嫌な時代になった。
同時に、陸続きの国境がない日本の「平和ボケ」的雰囲気が明らかに変化している。
最後に、雇用統計ライブをYouTubeでやるけど、日本時間午後9時半に発表後、ライブやっても翌日は土曜日で日本市場は休場だから、急いでも意味が薄い。
そこで8日土曜朝8時から、ライブ配信でやるよ。
来週はCPI発表もあるので、これは当日13日夜、統計発表後、ライブ配信する。


実は、私は新しい事に挑戦チャレンジすることが好きなのだが、YouTubeがかくもアッサリと結果が出ると拍子抜け。
1か月ほどで16,500人チャンネル登録。最終的には、たぶんツイッターフォロワー数と同じくらいの4万人くらいは行きそう。
そして、その程度が限界と見えてくる。アイドル系とは異なり(笑)、オッサンのyoutubeは、その程度。
しかも、グーグルがチャンネルに勝手に広告を入れてくるのでブスッ。
収益化路線は選択していないのに。
そもそもYouTubeは同じ経済関連でも、あざとい週刊誌的なノリが目立つね。
これも抵抗感違和感がある。
とはいえ、書くだけでなく、肉声で話せることはコミュニケーションの見地で深みが増すことも認めざるを得ない。
ややトーンダウンしつつ、まぁ当面続けてみる。
嫌になったら、即やめる。