市場が注目するFRB金融政策の超緩和から引き締めへの転換(インフレ対策)を時系列でまとめると以下のようになる。

量的緩和政策で毎月ばら撒くおカネの量を減らしてゆく(テーパリング、緩和縮小)この段階では未だ緩和政策継続だ。



テーパリングを完了する。この時点で量的緩和政策は終了した。



利上げを開始する。



量的緩和政策でFRBが購入した国債などの残高が9兆ドルに膨れ上がったので、これを減らし始める。(FRB資産圧縮、量的引き締め、QT)
この最後のQTの具体的内容が、今回発表された3月FOMC議事要旨で明らかになった。


ざっくりまとめると、ばら撒いたマネーの回収作業。
現時点で国債などを購入して急膨張したFRBの資産規模が9兆ドルに達するのだが、とりあえず、年1兆ドル程度のペースで減らすことにした。
減少額は毎月95億ドルからはじめ、徐々に増やしてゆく。
最終的に9兆ドルを何兆ドルにまで減らすかという問題は、未だ明らかになっていない。
市場内では5-6兆ドル程度の数字が予測されている。
なお、資産圧縮には、購入して保有してきた国債などを市場に売却して減らす方法と、保有国債が償還期を迎えた場合に、その同額の国債を買って残高を維持する方法が考えられる。
当分は、保有国債を直接売却せず、償還された国債分を再び購入しない(自然減)方法となりそうだ。
前者を積極的資産圧縮、後者を消極的圧縮という。
市場に対する影響は後者のほうがマイルドだ。


さて、この市場への意味は?これまで9兆ドルものマネーがばら撒かれ、「過剰流動性」となり、一時は「何でも上がる相場」とまで言われた。
投機マネーと化し、市場を荒らすことも頻繁に起きた。
ビットコインも、このカネ余りの恩恵を享受した事例といえる。
株も買われ過ぎ、株価も実力を上回る評価を受けた。
これが、今後は、徐々に、正常化に向かう。「金融正常化」というが、実態は過熱化して実力以上に跳ね上がった資産価格が元に戻ることなのだ。
先物価格のレバレッジも、今後は、引き下げられる傾向になる(ディレバレッジ)。


金市場にも過剰流動性が流入して史上最高値をつけたので、そのマネーが縮小すれば、金価格は下がる。
しかし、中期的には、金価格が買われる要因ともなる。
なぜ?
市場内では、急激に過剰マネーが回収されると、カネ余り依存症だったので、ショック的反応となり、市場が大荒れとなることが懸念される。
この場合は、リスクオフで安全資産としての金が買われるだろう。
しかも、利上げとQTの合わせ技は、いずれも景気を抑制する副作用があるので、景気後退も懸念される。
FRBの視点では、経済を不景気にしないと、物価を下げることは出来ない、との認識がある。
不景気覚悟のインフレ抑え込み政策なのだ。
仮に、そうなれば、不景気に強い金が買われるだろう。
結局、今回のFRB金融引き締めは、金にとって、逆風にもなるし追い風にもなるのだ。