昨晩はブレイナードFRB次期副議長の強硬引き締め発言で金価格には下げ圧力がかかったが、結果的に、それほど下落せず、底堅さが目立った。
結局、ドル名目金利が上昇しても、CPIが7%超、FRBが重視するPCEインフレ率でもコアで4%台ゆえ、ドル実質金利は大きくマイナス圏に留まることが、金利を生まない金には追い風となっている。


以下、ブレイナード氏発言について詳報。


ブレイナードFRB現理事は、副議長候補として議会承認待ちの立場だ。
それゆえ、5日の講演全文がFRBホームページに載った。
更に、発言文でも、主語が「私」ではなく「FOMC」となり、FOMC参加者個人の意見というより、FOMCの考え方を示す形式になっていた。


かくして、パウエル議長を補佐する立場になった同氏は、これまで超ハト派のレッテルを貼られていたが、5日の講演では、超タカ派に変身していた。
議会承認のための議会公聴会での発言の頃から、「インフレが米国経済の最大の問題」と語っていたので、ハト派色が薄まる予感はあった。
しかし、ここまで具体的に公言するのは想定外だった。


5日の講演中も、前半で1979年のボルカー発言「制御できないインフレが経済成長、そして雇用にも最大の脅威」を引用したあたりから市場はざわついてきた。
1960年代のバーンズ元FRB議長の「貧しき者がインフレの主たる被害者」との発言も引用された。
年後半の中間選挙までにはインフレ退治に関して何らかの結果を出すことが自らを副議長候補に指名したバイデン大統領への配慮とも映った。


そして、講演が最後の「金融政策」に入るや、大胆な引き締め発言が相次いだのだ。
5月FOMCで本格的にFRB資産圧縮を始めること。必要なら0.5%幅の利上げも否定しなかったこと。
3月FOMCの時点で発表されたFRB経済見通しに記された金利見通しより強力な引き締めになると明言したこと。


単語の選択も強い表現が目立った。
「FOMCは」連続利上げを「念入り」に進める。
「取り急ぎ」5月にも「急ピッチで」資産圧縮を開始する。
あたかもFOMC決定事項の発表の如き言い回しだ。本日発表の3月FOMC議事要旨には、更に具体的な資産圧縮についての議論が明示されることの前触れとも読めた。
市場とのコミュニケーションを重視する姿勢も見せているからだ。
市場は、既に、「迅速な」中立的水準への利上げと、2017~2019年より速いピッチの資産圧縮を織り込んでいるとも語った。
既に30年住宅ローン金利がここ数か月で1%以上引き上げられたことにも言及した。


その市場の反応だが、米10年債利回りが2.45%台から2.55%台まで急騰した。
対して、2年債利回りは2.50%台から2.52%台への上昇に留まった。(いずれも瞬間風速)。
その結果、逆イールドが順イールドに戻ったのだ。
これは、急ピッチの資産圧縮プログラムによりFRB長期国債保有量が減少することで10年債利回りには上昇圧力がかかることを市場が先取りした動きと読める。
対して、政策金利に連動傾向が強い2年債利回りは、既に、市場が急ピッチの利上げを織り込んでいるので、10年債ほどには動かなかった。
そもそも、逆イールドを早期に解消して銀行経営も安定させるために、FRBは資産圧縮により10年債利回りを引き上げる可能性が一部の地区連銀総裁から指摘されてきた経緯もある。


株式市場は、既に地政学的危機と利上げに備え、ポートフォリオのリスクを減らし、現金保有を増やしてきたので、それほど大きな下げにはならなかった。
引き続き、本日の3月議事要旨発表に身構えている。
12月FOMC議事要旨発表の後には1月6日の日経平均が844円急落した苦い記憶も鮮明に残る。
ブレイナード発言は「前座」で、本番に備える姿勢だ。
外為市場ではドルインデックスが99.5まで上昇して、いよいよ100の大台に接近中である。


なお、筆者が注目したブレイナード発言は、積極財政支出をインフレ要因の一つと明言して、年後半には、財政政策のインフレ効果が弱まると語ったことだ。
バイデン大統領の看板政策を盛り込んだ200兆円規模の財政投入が民主党議員一人の造反で未だに宙吊りになっており、いっぽうで、富裕層への増税案が提示される政治的状況を示唆している。
市場の視点でも、FRBの金融引き締め策の骨子が明らかになれば、次の関心事は財政政策に移るだろう。
バイデン氏の視点に立つと、財政支出を膨らませれば、インフレ圧力が強まってしまう。
増税案を通せば、インフレ抑止要因となる。
なお、先週、100万バレル規模の原油備蓄放出を敢えて今後6か月継続としたことも、インフレについて中間選挙までに何らかの結果を出すことを迫られているからであった。
金融引き締めと財政縮小を同時進行する羽目になったバイデン大統領は、経済面でも綱渡りを強いられている。


さて、都内では桜が散ってきたが、池上本門寺では未だ花見が出来たよ。

 

池上本門寺の桜

 

 

豊島氏と桜

我が家の桜も未だ咲いているので、週末は、友人を招いて花見会。
皆、花より団子だったけど(笑)

 

自宅から見える桜