24日のNY金市場は、記録的経済統計好転や要人発言で、国際金価格は、1,790ドル台でリバウンドせず、弾性なく塑性の展開となった。

 

kitco

まず要人発言から。
サンフランシスコ連銀デイリー総裁といえば、FRB議長人事選定の過程でFRB理事候補としてウォール街では名前が挙がったほどの人物だ。
ハト派の主導格としても知られる同氏が、23日の米メディアインタビューで、経済データ次第では、2022年1-2回利上げがあっても驚かない、と発言した。資産購入縮小ペースを加速させることにも言及。
その条件として、11月雇用統計と11月消費者物価指数を見て決めると具体的に語った。
インフレについては「目玉が飛び出るほど=eye popping」と率直に印象を述べている。
これまでのFOMC参加の要人発言では、もっぱらタカ派の発言ばかりが目立ったので、「ハト派も変心」と市場の注目を集めている。
同氏は今月9日には「FRBが過度に早い時期に利上げに踏み切れば、雇用増のペースが鈍化する。長期化するトレンドかどうか分からないときに、取るリスクとしては大きすぎる」と慎重論を語っていた。
その発言直後の10日に発表された10月消費者物価指数6.2%増と16日発表の小売売上高1.7%増の経済統計サプライズが、同氏の見方を変えたと思われる。
同日に発表された11月FOMC議事要旨でも、資産購入縮小ペースの加速が議論されたことが明らかになったが、そのFOMC後にデイリー総裁のように利上げ容認派が増えている可能性がある。
12月FOMCの時に発表されるドットチャート(FOMC参加者の金利予測分布表)への注目度は益々強まる。
CME FED WATCHによれば、最速2022年5月に利上げの確率が23日の38%から24日は44%にまで急増している。
このケースだと来年3月頃にはテーパリング終了となろう。


次に、24日には、感謝祭祝日により前倒しで多くの経済指標が発表された。
特に注目されたのは、FRBが最も重視するインフレ指標である個人消費支出(PCE)物価指数(10月)。
コア指数で前年同期比4.1%上昇して、1991年1月以来、約30年ぶりの高水準となった。
更に、同日発表の週間の米新規失業保険申請件数は19.9万と前週(27.0万件)から減少して、52年ぶりの少なさであった。
市場の反応も、政策金利に連動傾向が強い米2年債利回りが年率0.64%と3ベーシス上昇した。
長期金利の指標となる10年債利回りも1.7%の大台に接近する場面もあった。
ドルインデックスも96台で急伸。97の大台をうかがう時間帯もあった。
ドル高円安傾向も115円台に達した後も、ジワリ継続の様相だ。
引き続き118円視野の展開だ。
こうなると、金価格暴落後の回復にも手間取る。
但し、円安ゆえ、円建て金価格の下げには歯止めがかかる。
 

なお、インフレが市民生活を直撃するに至り政治問題化したので、バイデン大統領も、経済に関するコメントが増えた。
新規失業保険申請者数が52年ぶりの低水準と発表されるや、間髪入れず、自画自賛気味の声明を発している。
生産制約インフレについても、米国西海岸の港湾ひっ迫はピークアウトの兆しも見られると、不安感払拭に懸命の様子だ。
とはいえ、ウォール街が富の象徴との民主党急進左派の視点を意識してか、歴史的高水準の株価に関しては一切触れていない。
株価を政権の通信簿と位置付け、株価が上昇すると歓迎発言を発していたトランプ前大統領との対比が鮮明だ。