国際金価格が1,400ドルの大台を突破した。昨年から1,350ドルの壁が市場では強く意識されていたが、米利下げ見通しと中東緊張が共振して、レンジ上限を上放れた。
市場では「有事の金」と囃されるが、個人投資家がここぞと金まとめ買いに走るのは、かっこうの「カモ」になりかねないので注意を喚起したい。
プロ目線では、有事の金は「売り」なのだ。

例えば、イラク戦争勃発後、金価格は急落した。
イラク開戦の「噂」で金を買い増していた金投機筋が、一斉に利益確定の売りを入れたのだ。
煽られ踊らされた個人投資家は、はしごを外され、高値掴みする羽目になった。
「噂で買ってニュースで売れ」
これは、筆者がスイス銀行チューリッヒのトレーディングルームで真っ先に教えられた相場格言だ。
今回も、米イラン軍事衝突の可能性が顕在化する過程で金が買われている。

万が一、トランプ大統領が対イラン報復軍事攻撃に踏み切れば、金価格は瞬間的に1,400ドル台で大きく続騰するだろう。
しかし、今回の金買いは短期売買の先物主導だ。
しかも、AI取引が主体で、相場は人間の手を離れている。1,380ドルや1,400ドルの節目突破も、取引が薄いアジア時間帯で起こっている。
相場が放物線を描くと、下げがきつくなるは必至の地合いだ。
NY先物市場からは強気のコメントが相次ぐが、上海・ムンバイ・ドバイの金現物3大市場では需給が緩み、店頭は閑散としている。
高値圏で買い控えと現物買取が増加の傾向にあるからだ。
そもそも金の実需は、その7割前後を新興国に依存する。
特に金選好度が文化的に高い中国・インド・中東では、長期的金現物保有が前提なので、「押し目買い」に徹底している。
近々娘が結婚する予定のインドのお父さんは、米国FRB議長発言などに関心は持たず、とにかく、安く金が買えるときに持参「金」を買い集めておくものだ。
一般的に市場では、NY先物市場の売買残高やETF残高の増減が材料視される。
しかし、筆者は、上海・ムンバイ・ドバイの現地金価格と世界標準のロンドン金価格のスプレッドを重視する。
高値圏になると、この価格差がディスカウントになる。新興国現物市場で需給がたぶつくからだ。
これは、相場がいずれピークアウトするサインとなる。逆に、安値圏になると、プレミアムに転じる。
NY先物主導で急落していても、上記の3大現物市場では店頭に列が出来るほど賑わい、需給がタイトになるからだ。
これは、底入れのサインとなる。
有事の金急騰局面では、まず、このスプレッドがディスカウントになるものだ。
足元では、ムンバイでディスカウントが15ドルまで拡大している。
3年ぶりだそうで、それでも買い手がつかないと現地業者は嘆く。
個人投資家へのアドバイスとしては、金ETFは「平時」にコツコツ買い増し、「有事」に備えるのがよい。
その「有事」には、お父さんのリストラ失業などの「家庭内有事」も含まれる。
そして、「買ったら忘れる」くらいの気持ちで臨むこと。金は資産運用であくまで「脇役」だ。
「主役」の株・債券と組み合わせて保有することで初めて本来のヘッジ効果が得られる。
この脇役の出番がなく、役立たないことが、実は、最も望ましいのだ。
 

さて、今週末は、G20@大阪の特集番組生出演で大阪出張。
もう3か月も前からテレビ局は出演者のホテルを押さえているのだけどね。
ただ、ホテルからテレビ局までは、大渋滞が予想され、歩きとなるみたい。
スーツ持って、梅雨の中を歩くと、濡れそうで困った~~地下鉄も混みそうだしね。
そもそも、G20自体が空洞化・機能不全。セレモニーというか、首脳たちの顔見世興行というか。
今や、Gゼロの時代と言われる。あるいは米中のG2。
ただ、日本人にとっては、こういう出し物で国際感覚が養われば、それで良いと思う次第。
ちなみに、海外メディア・市場は、G20本番ではなく舞台裏の米中トップ会談に関心が集中している。


これは↓年初の相場展望だけど、「米利上げ停止で」1,400ドル超というのが、市場の異変を象徴しているね。
年初は「2019年利上げ何回」で騒いでいたからね。
実際には「利下げ検討」で1,400ドル超となった。
年初コメントでは、万が一利下げとでもなれば1,500ドルも、としている。
現実には、7月に0.5%刻みで大幅利下げあれば、金価格水準は更に切り上がるだろうね。
地政学的リスクとして、日経インタビューではトランプ大統領弾劾とイランを挙げたのだが、字数制限で削られた。
 

金、米利上げ停止で1400ドル超も 豊島氏:日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39831000Z00C19A1EN2000/