「交流サイト個人連合」対「投資のプロ」、市場の新常態

「CO2とCOOは削減対象」
これはバイデン政権について聞かれたときに筆者が常用するジョークだ。脱炭素義務化。規制強化。上層部に厳しく、中間層重視の政権方針を表す。企業幹部との勉強会では「洒落にならない」と言われ、若手サラリーマン参加のネットセミナーでは「はげどう=激しく同意」と熱烈歓迎される。
交流サイトで結束した個人投機家軍団(投資家ではない)が空売りヘッジファンドを締め上げている件も、富める「体制」側の代表的存在である大手ヘッジファンドから中間層への所得再配分と見れば、バイデン大統領の御意に叶うやも知れぬ。元フェイスブック幹部で今回のネット上での主導役の一人とされるカリスマ投資家のパリハピティヤ氏などは、日本流にいえば現代版ネズミ小僧のごとき存在としてネット庶民の喝さいを受けている。「ヘッジファンド幹部らは高級ホテルの一室で戦略的意見交換を行うが、交流サイトのレディットでは庶民が自由に意見交換している。よほど透明性があるではないか。既に私は利益確定した。50万ドルを寄付する」とテレビ緊急生出演で語っていた。但し、同氏はカリフォルニア州知事立候補を表明しているので政治的発言の匂いも漂う。
その2時間後に開催されたFOMC後のパウエル議長記者会見も、いきなり、この株価の異変についての質問から始まった。同氏は回答拒否。にべもなくノーコメントと一蹴されると、マーケットは、FRBも打つ手なし、との印象を受ける。ダウ平均も、このあたりから、下げ幅を拡大。前日比600ドルを超す下げとなった。ホワイトハウス記者会見でも、この件について質問が飛んだ。サキ報道官の答えは「イエレン財務長官も事態を注視している」。パウエル議長より、やや踏み込んだ印象だ。経済テレビチャンネルも、終日この現象についての報道に明け暮れた。ウオール街では「ヘッジファンドなどスマート・マネーが、個人投資家のスモール・マネーに屈した」と、やや苦々し気に表現される。米国株式市場にとって今週は重要な決算ウイークで、なおかつFOMCというイベントもあったのだが、「企業決算」や「金融政策」更に「経験的チャート分析」とは全く無縁の世界で独り歩きするレディット集団に対峙して傍観するばかりだ。SEC(米国証券取引委員会)も緊急声明で事態重視の姿勢を明示した。このニューヨーク市場最前線の臨場感がなかなか東京市場には伝わらず、もどかしい。かくいう筆者も、この異変は所詮一過性の珍事程度に見切っていた。しかし、この24時間でのエスカレートに接し、新たな市場参加者の出現という新常態を重く受け止め始めたところだ。なにせ「なんでもお助けサイト」的なレディットの「ウオールストリート・ベット」というフォーラムは4300万人ものフォロアーをかかえる。昨日、グーグルの検索トップには「ゲームストップ」の名前があった。個人でも結束すればヘッジファンドに勝てることを体得したので、今後の動向も無視できない。
ニューヨーク市場のアナリストも困惑している。件のゲームストップ株価は昨日も一日で138%急騰して347ドルで引けた。さすがにバンクオブアメリカのアナリストは目標株価を大幅に引き上げた。といっても1.6ドルから10ドルへの「大幅引き上げ」だ。元々6ドルでも上昇とされた銘柄。がらんとしたモールの中で営業するゲーム小売り店舗の実態は厳しい。ECへの移行を新たな経営戦略とするが、売れ筋はマニアが店頭でお宝探しするレアものゆえ、実店舗でなければ存続は難しいと思われる。そのような銘柄の時価が今や円換算で1兆円から2兆円の間で乱高下している。バリュエーションとは異次元の世界だ。
更に、レディット集団は初心者だが、日々の学習効果により、オプションを使った「投機術」を体得しつつある。買い=コール・オプション一筋から、売り=プット・オプションの併用も始めている。実力通りの株価に戻る場合も想定しているのだ。
対象銘柄も拡大している。昨日は映画館経営のAMCエンターテインメント社が狙われ、一日で301%急騰した。同社とは全く無関係のケーブルテレビ会社AMCネットワーク社も、混同され買われる有様だ。
更にはコダック、ニキアなどの銘柄にまで買いの手が伸びている。
このドタバタ劇の中、株価が急騰したところで、すかさず、ちゃっかり増資して、当面破綻を回避できた企業もある。まだレディット軍団に狙われていない飲食業界からはネズミ小僧待望論さえ聞こえてくる。
対して、空売りに懲りたヘッジファンドのなかには、急遽、仲間のファンドから20億ドル単位の緊急資金救済を受ける事例も発生した。
かくして悲喜こもごものレディット相場。
市場目線ではVIX指数が前日比40%以上急騰して久しぶりに30の大台を突破したことが注目される。
時間外でダウ先物は3万ドルの大台を割り込む局面もあった。
レディット銘柄のボラティリティー(価格変動性)の激しさに、ビットコイン相場も圧倒されたごとく3万ドルの大台近くまで下落してきた。
金も押され気味で1830ドル台で推移。
願わくは、レディット集団が投機家ではなく投資家になってほしいものだ。いきなりオプションという中上級コースから入門してしまったが、一度は初級コースに戻り、金融リテラシーを高めてくれれば、株にも金にも、市場にとっても健全な新規参入者軍団となることであろう。
さて、今日の原稿ではネズミ小僧を例えとして使ったが、若い読者は知らないかもね。セミナーで語ったとき、若い参加者がポカンとしてた。まぁ私は私でAKB48或いは乃木坂46と言われ???ということも。AKO47なら知ってるよ。忠臣蔵、赤穂47士。となると若い人は、なんのこと??(笑)
今日紹介の予定だったマガーリ@自由が丘の揚げピザ(宅配)は、昨晩自家製きりたんぽ(写真、秋田のおばあちゃんの秘伝)食べ過ぎたので、延期(笑)

 

きりたんぽ
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