「しぶこ」に見るトレーダーの資質
今日の原稿はゴルフに興味ない人は読み流してください。最低限のゴルフ・ルールを知らないと、昨日の渋野日向子選手の大健闘の意味は分からないからです。私はワールド・「ゴルフ」・カウンシルと言われたほどゴルフ好きなので。米・加・豪などの大手金鉱山に出張するたびに、現地で朝8時から3時まで会議。その後午後4時から午後8時までゴルフ、そしてディナーというサイクルを繰り返していました。僻地の金鉱山は従業員施設としてゴルフ場持つところが多かったのです。ゴルフバッグ担いで、海外出張の日々。GOLDとGOLFが仕事。年間100回ゴルフが普通でした。手のひらにはゴルフ「たこ」が出来て。そもそもWGCに入社した年の社内全体会議がフロリダ州のゴルフ場兼コンファレンス施設でしたから(笑)今では、すっかり変わりましたけどね~~私の趣味もスキーのほうが強くなりましたけど。
さて本文。
日本人初の全米女子オープン優勝はならなかった。
しかし渋野日向子選手が優勝を逃した、というより、時に体感温度氷点下という逆境で耐えに耐えて4位を死守したことを称えるべきだろう。冬の極寒の気候でのプレーに慣れている韓国人選手が結局1位2位に入ったことは偶然ではあるまい。
筆者も昨晩は、NY相場モニター画面と全米女子オープン中継画面の両睨みの一晩を過ごした。
日本では、力感溢れるドライバーショットなどアスリート型ゴルフと「シンデレラ・スマイル」のユニークな組み合わせ感が注目を浴びるが、昨晩は全く違った姿を見せた。
豪雨直後で打ったボールには泥が付き、それを拭くことは許されない厳格なルールが適用された。「あるがままに打つ」というゴルフの基本を全米女子オープンは頑なに守り続けている。選手の立場では、泥がボールのどの面についたかで、ショットの飛距離・方向性が大きく違ってくるが、打つ前には読み切れない。しかも、低温でカラダは思うように動かない。飛距離では今回の全参加選手のなかでも中ぐらいの渋野選手は、首位を争っていた同伴競技者に、ドライバーショットで20-30ヤード置いて行かれていた。それでも、アプローチやパターで凌ぎまくり、現地の米国人コメンテーターは「小技名人のシンデレラ」と評していた。日本では「小技が苦手」とされていただけに、成長ぶりがうかがえる。そして、ここに、筆者は渋野選手が持つ「トレーダー」としてのポテンシャルを見た。
トレーダーの真価が問われるのは、ロスが重なる逆境に置かれたときだ。うまく相場の波に乗ったときに、稼げるだけ稼ぎ、逆風が吹けば、ひたすら耐え続ける。これがトレーダーとして成功する極意といえる。とはいえ、言うは易く、行うは難し。こればかりは、自らが胃を痛める体験を積まないと、リスク耐性は醸成されない。
全米女子オープン最終日に逆境に置かれた渋野選手は、まさに、トレーダーの顔を見せていた。
さすがに「スマイル」を見せる余裕もなく、とはいえ、キリリとした表情。スコアでは2日目に好調の波に乗った結果の最終日4アンダー・スタートという「貯金」も使い果たし、一時は「イーブン=プラス・マイナス・ゼロ」にまで沈んだ。それでもトップ5には残る好スコアだ。最後の18番ホールでロングパットを決めバーディーフィニッシュで締め、1アンダーで収めたところにトレーダーとしての資質を見た。通常、女子プロ・ゴルフで優勝ラインといえば、10アンダーなどが珍しくない。しかし、昨日は、優勝が3アンダーでアンダーパーが僅か4人という厳しい戦いだったのだ。
将来、万が一、ゴルフをやめる様なことがあれば、トレーダーとしてリクルートしてみたいと思った。よく、渋野日向子選手は「何かを持っている」と言われる。彼女のような明るいキャラがトレーディング・ルームにいるだけで、殺伐とした現場の雰囲気も一変するのではないか。他のトレーダーのモチベーションも高まるであろう。トレーダーは一匹狼とのイメージが強いが、実はチームプレーが成果を決める世界なのだ。
「チーム・しぶこ」の夢を抱きつつ、昨晩は現実の相場モニター画面の世界に戻っていった。