株コロナバブル破綻、金には若干の換金売り

ここのところ価格を大幅に上げていた株式市場だが、昨晩はダウ1861ドル安の暴落を演じた。史上4番目の下げ幅だ。ここまで急反騰してきたが、多くの市場参加者が、最悪の状態にある実体経済から遊離した株価に疑念を持っていた。それでも皆が買うから私も買うという投資家心理で株が買われてきた。
しかし、ここにきて一挙に株の「コロナ・バブル」が破綻したといえよう。当面は値動きの激しい状況が続きそうだ。
恐怖指数=VIXも29から42まで急上昇。40の大台は「危機圏」とされる。
株暴落の理由は二つ。
まず、昨日本欄にて詳述したように、パウエルFRB議長がFOMCでかなり悲観的な経済見通しを語ったこと。
そして、米国でコロナ第二波と思われる感染者増がテキサス、アリゾナ、フロリダなどの州で顕在化してきたこと。単に検査数増加だけでは説明できない感染者増と見られている。
例えば、アリゾナ州の場合は、夏は暑いのでエアコンをつけっぱなしで部屋に籠ることが多い。更に、暑いのでマスクを着用する習慣が無い。この事例は、猛暑を迎える日本にも教訓となろう。
市場は祝経済再開モードに水を差された感がある。トランプ政権は、もう、ロックダウンはしない、との姿勢だ。大統領選挙を意識しての強行突破であろう。しかし、今後、NYなどで第二波が起きると国民的ショックは強くなろう。
この二つの要因は重い。現状は、実体経済から遊離した株価が、実力相応の株価水準に回帰してゆく過程と言えよう。
そして、金市場の反応だが、VIXが40の危機的水準に接近すると、安全資産の金も現金化して、不意の出費に備える事例が出始める。特に、信用取引で株を売買している投資家は、株価が暴落すると、追加証拠金(マージン・コール)を現金で支払わねばならない。そこで、利が乗った金買いのポジションを手仕舞うことが、手っ取り早い現金捻出となるわけだ。金はATMの如しと言われる所以だ。
ただ、今回の換金売りは未だ限定的だ。金国際スポット価格は1720ドル台に留まっている。昨晩は安値1719、高値1747のレンジで推移した。株が暴落して換金売りが出始めても、金は依然、歴史的高値圏にある。
なお、為替はやや円高に振れているが、以前に比し、レンジが狭い。おおむね106円―109円、広く取って、105-110円程度。
従って、円建て金価格が従来より動きやすい地合いと言えよう。
なお、106円台で円高と騒がれるが、史上第四位の株暴落が起こるような市場環境であれば、96円になっても不思議ではない。私は今の円相場が円高というより円安と見ている。