今週は、さしたる大きなイベントも材料もなく、私も、距離を置いてマーケットを見ていました。
今年は毎晩少々NY相場に深入り気味の日々だったので、メリハリをつける意味で良かったと思っています。
たまにはOFFの週を過ごすことも大切ですよ。
私はよく印象派の絵画に例えるのですが、パリのマルモッタンというモネの水連など印象派に特化した美術館を見学したことがあります。
印象派の絵画は、近くで見ると絵具の塊しか見えない。
それが距離置いてみると、水辺の水連が浮かびあがり、おぼろげな池の景色が見えてくる。
さて、足元では日本株が連日ジワリ上がってきています。
これはヘッジファンドの買戻し主体なので、このまま株価上昇は続かないと思います。
たまたま円相場が108円程度の「円安」に振れたことも追い風になりました。
しかし、良質の株買いは限定的です。今が日本株の高値圏でしょう。
米中貿易戦争などの大きな問題は全く解決しておらず、楽観論が先走り気味です。
次に、2020年の金価格予測について。
私は基本的には強気のスタンス(の予定)です。
まだ考えを固めてはいません。諸々吟味中です。
そこで、気になることは、リサイクルの量。
結論からいうと、NY金が1,500ドルを超えると、世界的にリサイクル還流が急増するのです。
過去の需給統計を見れば検証できます。
2009年から2012年にかけてNY金が史上最高値まで急騰する過程では、年間金リサイクル量が1,700トンを超えました。
直近の年間新産金が3,300トン近傍ですから、かなりの量です。
特に年間平均金価格が1,500ドルを超えた2011、2012年に高水準が続いています。
その後、NY金が1,100ドル~1,200ドル台に下落すると、年間リサイクル量は1,100トン~1,200トンに激減しました。
2017年には1,156トン、2018年には1,172トン。
ピーク時より500トン超急減しています。
この傾向が変わったのが今年6月。NY金が久しぶりに1,500ドルの大台をつけた時期から、リサイクル(個人の売戻など)が急に増え始めています。
もし、2020年にNY金が1,500ドルの水準を超えて維持されると、来年のリサイクル量が再び年間500トン増えても全く不思議はありません。
特に、2011、2012年時に比し、世界の金リサイクル・サプライチェーンのインフラは急速に拡充されました。
日本でも国中に「金、プラチナ買います店」が雨後の筍のごとく増えましたが、これは世界共通の現象なのです。
アテネに行ったとき、財政破綻した国の数少ない成長産業セクターが金買取業でした。
地下鉄駅降りると必ず駅前にWE BUY GOLDという金買取チェーンの支店がありました。
リサイクルというのは、ヘッジファンド売買と異なり地味です。一人数グラムとか数十グラムの世界です。
しかし、それが、世界中で同時多発的に起きると、1,700トンというような途方もない数字になるのです。
ですからトレーダーは、この材料を軽視します。
「昨晩、ロンドン市場でリサイクル売りがまとまった50トンも出た」などという話にはなりませんから、外電の見出しにもなりません。
しかし、ボディーブローのごとく連日続くと、通年では非常に強い需給要因になるのです。
逆にヘッジファンドが短期的に50トン売って、当日の相場が急落しても、年内には買い戻される宿命にありますから、通年ではゼロサム・ゲームでチャラになるので気になりません。
なお、今年は中央銀行の金購入が大きな話題になっていますが、その数字は、2017年で374トン、2018年で651トン、今年は増えて700トン程度でしょう。
リサイクルの売りが、中央銀行の買いを相殺してあまりあることになります。
なお、金ETFの残高が2,800トンを超えていますが、この半分以上は、なにかあれば一斉に売られるヘッジファンドの買いです。
ですから、私は、リスクいっぱいのマーケットで来年も強気(の予定)ですが、需給面から上値が1,800ドルとか2,000ドルまでは上がらないと見るのです。
さて、今日の写真は、はやくもタラの白子(通称タチ)。
もう寿司屋の店頭に出てきました。まだ若いけど、熱の通し方が抜群で旨い。
これから冬本番になると、若年から熟年に成長して、独特の旨さが濃くなります。
普通は酒のつまみですが、酒を飲まない私は、ムース感覚で食します。
濃いお茶との相性が良いのですよ。真冬に北海道にわざわざタチを食べにゆくほど入れ込んでいます。
零下8度の世界で食するタチは、東京で供されるタラの白子とは異次元の世界。