最近、証券会社やFPから「ポートフォリオの10%は金で運用せよ」との声が目立つようになりました。
資産運用の主役である株価は視界不良です。足元で上がっても、高値警戒感は強まります。そもそも景気減速という市場環境でリスク資産の代表格=株が買われるのは、「不況下のカネ余り」現象といえるでしょう。
かくして主役が不安のとき、お声がかかるのが脇役の金。
金の供給サイドの「新産金」は明らかに現水準で長期的にはピークアウト=頭打ちです。陸の金鉱山で残っているのは、ジャングルの奥地とか山の上とか、過酷な自然環境にある埋蔵量と、海底の金鉱床が中心。今の価格水準では開発・採掘コストが高すぎて、鉱山会社の損益分岐点に達しません。新たな金鉱脈開発案件が激減しています。通常、金鉱山は開発開始から実際の操業が始まるまで3-5年はかかります。それゆえ、5年後の金生産量は激減するかもしれません。大手金鉱山会社の合併も目立ちます。生産量を増やせないから少しでも管理部門などを共有してコストを下げ生き残りを図る戦略なのです。唯一、供給が増える可能性があるのは、リサイクルでしょう。それも金価格が1200ドルの低水準では「買取」に出される金の量が減ります。1500ドル程度になれば、リサイクルが急増するでしょう。それゆえ、供給サイドから見ると、1500ドルがレンジの上限と考えられます。これは、あくまで供給サイドの視点。需要が増えれば、1500ドル以上に上がります。
いっぽう、1200ドルを割り込めば、掘っても損する金鉱山が徐々に増えてゆきます。いっぽう、価格が安くなれば、現物需要は中国インド中心に確実に盛り上がります。その結果、需給が締まり、底値圏となるのです。覚えてますか、NY金が1200ドルを割り込んだとき、このブログで、中期的には底値圏と書き続けたことを。短期的に今が大底と当てるのはプロでも至難の業ですが、価格水準が底に近いことは予知できるのです。但し、NYの金先物価格が急落するときは、大概メディアで「金の輝きは失せた」との見出しが躍るものです。こういうときが、実は長期的に買い時なのですが、個人投資家が「輝きが失せた」とされる金の買いに入るのは、清水の舞台から飛び降りる気持ちですよね。どうしても、メディアが「有事の金!」などと囃すときのほうが、心理的に勢いで金を買おうかという気持ちになるものです。でも、実は有事の金はプロにとって相場のピークの予兆なのです。
では、今の状況はといえば、リスクだらけの世界で、金価格は出遅れていると思います。そこに割安感が生じ、中期長期の資産形成でそろそろ金を10%を目途に積み立てよう、という機運が冒頭に書いたような金買い推奨となって顕在化しているのでしょう。

さて、今日の写真は、季節の生菓子@ミッドタウン虎屋。青笹の葉で道明寺生地を包んだ一品。名付けて「笹衣」。

虎屋