PTの現状
プラチナが年末の870ドル(12/12)で底を打ち、1,029ドル(1/25)まで上昇、その後は1,000ドルをはさんだ展開になっています。
・昨年の値動きを見ると900ドルが現在のプラチナの下値抵抗線になっている。
生産コストが980ドル近辺といわれている現状では、いくら環境が悪いとはいえさすがに900ドル当たりでは売りが止まり、割安とみた投資家の買いも入ってくる。
・逆に上値の抵抗線は1,000ドル。ゴールドの上昇が最大のサポート要因となりプラチナも買われたが、さすがに1,000ドルを越えるレベルでは利食いの売りも多くその周辺で頭をうった状態である。
(ドル建てプラチナの動き)
(円建てプラチナの動き)
「プラチナを巡る周辺情況」
(需給)
・鉱山生産量は安定。2017年は186トン程度。過去6年を振り返ると2014年がストライキの影響で160トンと少なくっていますが、あとはおしなべて180トン前後。
・リサイクル(自動車触媒、電子材、宝飾品)からの2次供給はだいたい毎年60トン前後。
・一方需要は自動車触媒の伸びが頭打ちとなり、宝飾品需要と投資需要の減少が需要全体を大きく引き下げている。
・その結果2017年は過去6年間で初めての3.4トンの供給過多に。
(プラチナの供給と需要:Johnson Matthey PGM市場レポート2018年2月より)
(南アの政権交代とランドの動きと鉱山会社の動き)
プラチナの生産の70%以上を占める南アフリカの通貨ランドの動きはプラチナの価格に大きな影響を持ちます。
南アランドは2012年くらいまでは、1ドル=8ランド前後での安定した動きでしたが、その後はランドが大きく下落、2016年年初にはなんと18ランドまで下落し、ランドの価値はわずか4年の間でその価値が半分以下になったことになります。
このランド安はアングロアメリカン、インパラそしてロンミンという世界の3大生産者にとっては、ランド建てのプラチナ価格の上昇要因であり(円安で円建ての価格が上がるのと同じ理屈です。)、結果的に生産者の売却を促す要因となり、ドル建てプラチナが下降圧力を受けることになりました。
しかし今年に入ってからその流れは反転しました。
ランドは昨年年末当たりから大きくその価値を上げて、ドル建てプラチナの強材料となりました。(ランド建てのプラチナ価格は2012年8月以来の安値に沈んでいます。つまり生産者が売りを控えるということになります。)
このランドの動きの主な原因は、問題を多くかかえたズマ大統領がようやく辞任となり、ラマポーザ氏が大統領になることを世界が評価した結果だといえます。
しかしながら、南アの失業率は27%もあり、大統領が変わってもすぐに鉱山会社の生産を絞るということは政治的に非常に難しい状況にあります。
(ドルランドとプラチナ価格)
「自動車触媒需要」
プラチナの全需要244トンの内最大のものは、102トン(約42%)をしめる自動車触媒です。
プラチナ触媒は主にディーゼルエンジンに使われています。
(ガソリン車にはパラジウム触媒)そしてディーゼル車の最大の市場は欧州です。
2015年にフォルクスワーゲンがディーゼル車の排ガスを不正に操作した事件により、欧州でも小型車のディーゼルからガソリンへの乗り換えがすすみました。
そしてつい最近の話ですが、ドイツでは連邦行政裁判所は、都市など自治体が環境保全のためにディーゼル車の市街地走行禁止などの措置をとるべきだと勧告。
もちろんこれは2世代前の規制であるユーロ4への対応車までが対象ですが、環境規制を満たしている最新のディーゼル車の販売にもおそらく確実に影響が出るでしょう。
「宝飾品需要」
2017年の宝飾品需要は自動車触媒についで69トン(約28%)を占めていますが、そのうち40トンが中国です。
しかし中国の需要は年々減り続けており、それが宝飾需要全体を引き下げる格好になっています。2013年には93トンあったものが2017年には69トンへと減少していったのです。
この減少傾向は続いており、回復の兆しはまだまだ見えそうにありません。
このようにプラチナにとっては厳しい環境が続いています。
ゴールドの上昇に引っ張られ、そしてランドに助けられて870ドルから1,060ドルまで上昇してきましたが、この状況を踏まえるとプラチナが1,000ドル台を維持するのは困難であると思います。
おそらくは900ドルから1,000ドルの間が今のプラチナの居場所であり、今後ゴールドが大きく上昇するという状況がない限り、プラチナは頭が重たい展開になりそうです。
以上