二ヶ月前に今年前半のゴールドマーケット振り返りを書きました。
今回はそれから起こったことをまとめてみましょう。
前回のコラムの時点では、まだゴールドは3,300-3,400ドルのレンジの中での動きでした。
それから一ヶ月後の8月下旬、ゴールドは大きく動きました。
4月下旬から4ヶ月続いた3,200-3,400ドルのレンジ、6月からは下値を切り上げて3,300-3,400ドルのレンジでの動きになっていました。
年初から4月22日までの上げが2,600ドルから3,500ドルまでという900ドルという前代未聞の大きな上げであっただけに、その後、ほぼ同じ4ヶ月という期間のこのレンジでの値動きは、あまりに急速な上げの「消化期間」であったのだろうと思います。
この消化期間はマーケットが新しいレベルに慣れるのに必要な時間で、この慣れの間に大きな下げはなく、最初の5月半ばを除けば、ほぼほぼ3,300ドルが安値、3,400ドルを超えたのが3回あり、そのたびに売られて3,300ドルと3,400ドルの間での小動きとなりました。
明らかに下値には買いオーダー(おそらくは中央銀行の)が並んでいたのだと思います。
そしてこの年初からの急激な上げの間はおそらくゴールドに手を出すことができなかった個人投資家や機関投資家も、この値動きが安定したレンジの期間に積立を始めたり、ゴールドETFを買った投資家が多かったのではないかと思います。

- 拡大
- (年初からのゴールドとドルインデックスの動き)
この3,400ドル上値ブレイクのきっかけとなったのは、トランプ大統領がクックFRB理事を罷免するというSNS発信を行ったことでした。
このニュースが出た瞬間8月22日東京午前中にゴールドは3,350ドルから3,380ドルへと急騰しました。
そしてこれがきっかけとなり、ゴールドの上昇トレンドが始まりました。
トランプ政権がFRBの人事に介入し、来年パウエル議長の任期が終われば彼らの意図を汲んだ人間をFRB議長に据え、金利を下げさせ、財政拡大の路線を行くことをマーケットに連想させたのです。
現在でもまだ高いレベルにあるインフレ状況で、ここから金利を下げて、ふたたびゼロ金利に政策金利を持って行くということは、まさにさらなるインフレをもたらすのは確実だと思えます。
そういった恐れが投資家をゴールドへと走らせたのだと思います。
インフレにより通貨の価値は下がり、物の価値が上がります。
短期的にも、そしてもっと長期的にも通貨価値の下落は現在の資本主義の世界では宿命です。
資本主義経済は人間の欲望によって、拡大再生産をその究極的目的としているシステムである以上、経済は拡大して行き、通貨はどんどん刷られていきます。しかしゴールドは刷ることはできません。
通貨に対してゴールドが上がるのも必然ということです。
筆者はゴールドが、基本的にはこの資本主義経済が続く限り上昇していくと考えています。
もちろんそれは直線でずっと上がり続けるというわけではなく、相場として上げ下げを繰り返しながらも結局は上がって行くのが運命だということです。
8月29日にとうとう3,400ドルのこれまで抜けきれなかった上値を抜いた瞬間からゴールドにはより多くの買いが集まりました。
非常にテクニカルな動きですが、これまで頭を押さえられていたレベルを超えたことによって買い安心感が生まれ、よりゴールドに対する強気が蔓延したと考えていいでしょう。
9月2日にはとうとう3,500ドルを超えて、4月22日につけた歴史的高値3,500ドルを更新しました。
この日アジアで付けた歴史的高値は3,508.5ドルですが、その後新高値達成感から3,470ドル台までゴールドは売られましたが同じその日のNY時間帯に再び3,500ドルを超えて上昇、その後も上がり続けて9月8日には、3,600ドルをも超え、その後9月18日には3,700ドルを超えて、この原稿を書いている現在の歴史的高値は3,707.40ドルとなっています。
3,400ドルを超えてから、3,700ドルへと300ドルの上昇にかかった時間はわずか20日間です。
このペースは年初から4ヶ月で900ドルをあげた勢いを彷彿とさせます。今年後半の上昇の動きが始まったと考えていいでしょう。
年初の急騰の再現となるかどうかはわかりませんが、数ヶ月前に予想した通り年末3,800ドル程度までの上昇は十分にありえるのではないでしょうか。
円建てゴールドは年初から4,000円以上上がっています。
歴史的高値は9月16日つけた17,485円。
この日の税込み小売価格は19,265円をつけてこれも史上最高値となっています。おそらく年内に2万円に届くでしょう。
ドル建てゴールドも、円建てゴールドも、もしディップがあるのなら、そこは買いのチャンスだと考えていいと思います。

- 拡大
- (円建てゴールドとドル円の年初来の動き)
以上


