5月の第2週はロンドン・プラチナ・ウイークです。
パンデミックの間はオンラインになっていましたが、今年は平常に戻り、私も2018年以来5年ぶりにプラチナウイークに参加して来ました。
2019年にそれまで働いていた銀行を離れるまでは毎年このイベントに参加していました。
今年5月14日の日曜日からの一週間はロンドン・プラチナ・パラジウム・マーケット(LPPM)が主催し、世界中からプラチナ業界の関係者がおそらく500人以上が集まる一週間となっており、ここに行けば非常に効率的にコネクションを作ることができるという大きなメリットがあります。
例年日本からも多くの参加者があり、おそらくおなじく毎年行われるLBMA Precious Metals Conferenceよりも日本人が多く参加しています。
どれだけ日本がプラチナの重要な需要国であるかを示していると思います。
基本的には火曜日午後にLPPM セミナー、夕刻からカクテルパーティー、そして水曜日の夜にLPPMディナーがあります。
LPPMとしての公式行事はこれだけですが、プラチナ関係各社が、その取引先を招いて朝食、昼食、カクテル、そしてディナーを個別に催し、いろいろな参加者と何度となく顔を合わせることになり、ビジネスのきっかけとなることも多いのです。
こういったファンクションを行っているのは、私が知っているだけでも田中貴金属、ジョンソンマッセイ、TDセキュリティーズ、メタルズフォーカス&CME、三菱商事、ICBC スタンダードバンクなど、多くの組織そして企業があります。

 

(ギルドホールでのLPPM カクテルパーティー)
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(ギルドホールでのLPPM カクテルパーティー)

私は今回WPIC(ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル)のPlatinum Quarterly Q1 2023の発表に同席、その後Metals Focus & CME のカクテルパーティーでの「Platinum Group Metals Focus 2023」の発表に参加しました。
WPICのレポートは、Metals Focusの調査をもとに書かれたものであり、その需給の数字はほぼ同じものです。
この一週間にほかにもPGM関係各社の年次レポートが発表されます。
JM PGM Market Report 2023、Heraeus The Platinum Standard 2023などです。
この一週間で最も衝撃的であったのが、WPICとMetals Focusによる今年のプラチナ需給の予想でした。
彼等のレポートによると今年は30.6トンもの供給不足に陥るということです。
この数字は過去10年でも最大の供給不足であり、プラチナ価格の大きな上昇要因になりそうです。

 

(過去10年間のプラチナマーケットの需給バランス)
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(過去10年間のプラチナマーケットの需給バランス)

鉱山生産は南アでの電力事情も鑑み、過去10年の平均から6%少ない171トン。
リサイクルからの供給は自動車触媒スクラップの減少から9%の減る予想。
そのため供給全体では223.7トンで、前年比1%の減少となります。
一方需要サイドは、全体で254.3トンと前年比28%増加予想。
自動車触媒が11.1トン増加、工業用需要11.8トン増加、投資需要はマイナスから13.4トンと、昨年から1.18トン微減の宝飾需要以外のすべての需要分野での伸びが予想されています。
減少した供給、増加した需要の結果、プラチナは30.6トンの供給不足になるということです。
前回のレポートでも書きましたが6月から8月までは南半球の真冬となり、プラチナ鉱山生産の8割を占める南アでも電力需要のさらなる逼迫が予想されます。
この需給予想が正しければファンダメンタルズからはプラチナは大きく上昇してしかるべしだと言えるでしょう。


6月半ば現在、上記のマーケット需給予想に対してマーケットは下落、現在1,000ドルを割り込んでいる状態です。
供給不足よりも、来るべき不況での需要減退にマーケットは注目しているようです。
中国の最近の経済指標が不調を示していることが大きいのでしょう。
個人的には、供給不安を考えるとこの1,000ドル割れのレベルは売られ過ぎだと感じます。

 

(ドル建てプラチナ)
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(ドル建てプラチナ)
(円建てプラチナ)
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(円建てプラチナ)

                                            以上