金価格が更に上昇するための条件の一つとして「スタグフレーション」が挙げられる。インフレと景気後退が同時進行する最悪のパターンだ。もし、スタグフレーションになれば、金の独り勝ちとなろう。
そこで、米国経済の現状を吟味しておきたい。
今週発表された4-6月期の米GDPは、前期比年率で3.0%増。関税政策が景気に対する下押し圧力となっているが、米経済は懸念された失速を回避している。
但し、この数字には要注意点がある。高関税を控えた駆け込み輸入がGDPを押し下げるという技術的要因があるからだ。(輸入はGDPにはマイナス効果となる)。その結果、1-3月期には0.5%減と3年ぶりのマイナス成長となったのだ。ところが4-6月期はこの反動が出て、輸出から輸入を差し引いた純輸出がGDPを4.99ポイント押し上げた。在庫投資も過剰に積み増した分が減って3.17ポイントのマイナス要因となった。
以上が特殊要因だが、GDPの7割を占める個人消費が最も重要。1-3月期は0.5%増であったが、4-6月期には1.4%増となった。しかし、24年には3-4%増で推移したことを勘案すれば、個人消費はお世辞にも良いとはいえない。
関税は価格転嫁を通じて米国の消費者の負担となり、支出を落ち込ませる。現状では、価格転嫁は、まだ家電や家具などに限定されており、物価や消費への影響はこれからどうなるかが問題視される。
そして、企業の設備投資は1.9%増。1-3月期は10.3%と大幅に伸びていたので、その反動と思われる。住宅投資は4.6%のマイナス。住宅ローン金利が6%を大きく超える水準に留まり、1-3月期には1.3%減であったが、減少幅が拡大した。
以上を吟味すれば、米国経済は、脆弱性が目立つ。失速は回避したものの、予断を許さない展開である。金市場も、今後の展開を見守っているところだ。
なお、明日土曜日、BSテレ東「日経サタデー」に札幌からリモート出演して、米国経済について掘り下げる予定だ。バンコック並みの東京の酷暑には懲りたよ。今や、帰札すると、ホッとするね笑


