1. プラチナ相場の現状
プラチナは堅調な動きです。
ドル建ては800ドル台で底値を確認、900ドルを中心とした値動きです。
ドル建てではあまりぱっとしないように見えますが、いかんせんドル円が年初の115円から149円までほぼ30%上昇したことで、年初3,600円だったプラチナは現在4,300円と20%の上昇となっています。
節目であった4,000円を大きく超えることで、ロングの保有者には利食いの動きも目立っています。
2. 米国インフレ抑制法案(IRA)とプラチナ
WPIC(World Platinum Investment Council)のレポートによると、水素プロジェクトにに対する大規模な政策的助成が増えつつあり、それがプラチナの需要にも影響を与えそうです。
Hydrogen Insights 2022というThe Hydrogen Council (水素委員会)のレポートによれば、2050年までに水素エネルギーによりゼロカーボン排出を実現するためには、現在の水素プロジェクトへの投資額を3倍にし、$700billion(約101兆円)にする必要があるとしています。
現状では2030年までのすでに発表されている投資額は$240billion(約34.8兆円)であり、$460billion(約66.7兆円)足りないという計算になります。
しかし、今年8月7日米国上院議院で「インフレ抑制法案(Inflation Reduction Act)」が可決されました。
この法案により、今後10年の間に$369billion(約53.5兆円)もの予算がエネルギーと気候変動に対する政策につぎ込まれることが決まり、クリーンエネルギーと電気自動車(EV)の導入プログラムに大きく資金的なサポートがされることになりました。
この法案はグリーン水素にとってはゲームチェンジャーともなりえる大きな出来事であったと思われます。
米国では1kgのグリーン水素に対して$3の税金優遇が決定され、世界でもっとも価格競争力のあるグリーン水素であり、それに加えてこのIRAにより水素で走るFCEV(燃料電池車)を含むクリーン交通機関に対して多くの補助金が与えられることになりました。
水素はそもそも地球上に最も豊富に存在する元素です。
それはすでに燃料として使われており、炭素と違って排出物は水だけであるのでクリーンなエネルギーとして脱炭素の切り札として最も注目を浴びているエネルギー源であることは否定のしようがありません。
しかし大事なのは、その水素を作り出す段階です。
そのプロセスで化石燃料を使用していればそれはクリーンなエネルギーとは言えないということです。
再生可能エネルギーを利用してクリーン水素を生み出すために、プラチナは重要な役割を担います。
水素は水を電解することで、酸素と水素に分解し、取り出されます。
その際にプラチナはPEM(Polymer Electrolyte Membrane:固体高分子電解膜質)という技術に使われます。
この技術は水電解で水素を取り出す際のみならず、FCEVで水素エネルギーを利用するときにも使われているのです。
IRAにより、脱炭素を目指す産業でのグリーン水素の活用はさらに積極的になっていくことが予想されます。
実際、コンプレッサーのメーカーであるハウデンは米国での水素プロジェクトへの投資を増額させることを発表、ボッシュも$200million(約290億円)の投資で燃料電池車に使われる燃料電池関連の工場を米国で立ち上げると発表しました。
米国のインフレ抑制法案は、グリーン水素で利用されるプラチナの需要を大きく増加させる可能性があります。
今後何年もかけてゆっくり増えていく需要としてプラチナにとっては長期的に大きな追い風になると思われます。
だとすれば800ドル台で安値低迷している今はまさに投資を開始するチャンスではないでしょうか。
以上