今回が今年2021年最後の投稿になります。
今年がPGMにとってどんな年であったか振り返ってみましょう。


「プラチナ」


貴金属は全メタル年前半高、後半安の一年でした。
前半はパンデミックによる不安からのコモディティへの資金流入、そしてPGMは2020年のロックダウンからの自動車生産の復活により触媒需要の増加を期待した買いが入り高値圏へ。
しかし年央からは逆に「半導体不足」の影響が自動車生産におよびはじめ、それが需給のバランスを供給不足から供給過多へと導き、プラチナの価格の下落の主要因となりました。
またゴールドが金融緩和の終了という見方を背景にその値を下げたこともプラチナ価格の下落の要因になっています。
しかし、半導体不足の最悪期は脱し、ここからは徐々にその回復が予想され、それに伴って自動車生産が戻ること、そしてインフレ懸念によりゴールドにインフレヘッジとしての買いで価格が上昇すること、同じくインフレ懸念としてコモディティ全体が上昇することという可能性を考えるとおそらくプラチナは今年の安値である900ドル近辺が底値になるのではないでしょうか。
プラチナにとっては、排ガス規制の厳格化による触媒使用量の増加、自動車触媒としてのパラジウムの代替需要、FCV(燃料電池車)の触媒需要や水素社会でのクリーンエネルギーによる水電解での触媒需要とさらなる需要の可能性とゴールドやパラジウムに対しての割安さという価格位置を考えると2022年は堅調な推移を予想します。
ただ、不確定要因として考えておかなければならないのはオミクロン株による国際社会への影響の可能性でしょう。
経済の停滞が予想されるような事態にふたたび陥れば、産業用のメタルであるPGMにとっては厳しいマーケットになる可能性があります。

 

(プラチナの2021年のレンジ)
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(プラチナの2021年のレンジ)
(ドル建てプラチナの動き)
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(ドル建てプラチナの動き)
(円建てプラチナの動き)
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(円建てプラチナの動き)

「パラジウム」


パラジウムは貴金属の中でも最も大きな動きとなった一年でした。
年前半は、ロシアノリリスクの鉱山の浸水による閉鎖、そして、特に中国の「国六」による環境規制の厳格化から、ガソリン車のパラジウム触媒でのパラジウムの使用量が格段に増加したことで、中国のパラジウム買いが盛り上がり、それがパラジウムをほぼ3,000ドル、円建てではグラム1万円を超えるという前代未聞のレベルにまで引き上げました。
しかし5月初旬にこの歴史的高値を付けたあと、パラジウムの相場をいっぺんさせたのが「半導体不足」でした。
半導体不足に関しては前回詳しく書きました。
前回書いたことに加えて、米国が中国最大の半導体メーカーSMICに対して制限を課したことも、米国の自動車メーカーの半導体オーダーを台湾のTSMCそして韓国のSamsungに振り向けたことから、すでにフルキャパであった両社の半導体供給能力にも限界があり、半導体不足により拍車がかかりました。
その結果としての自動車の減産が、パラジウムそしてプラチナにも大きな影響を与え、年後半は逆に下落基調のマーケットになったのです。
特にパラジウムはその需要の80%が自動車触媒であり、自動車減産は直接的にその需要をヒットし、価格もそれに反応し、高値から大きく値を崩すことになったのです。


しかし当然この半導体不足が改善され、自動車の生産が以前のレベルに戻ってくれば、パラジウムの価格も回復してくるはずです。
2021年のパラジウム需要はこの半導体不足のために大きな影響を受けました。
Metals Focusの試算によれば、本来は31トンの供給不足の予想が、10.7トンの供給過多になるというパラジウムの需給が大きく狂いました。
しかし、2022年はもはや半導体不足は織り込み済みであり、多くの自動車メーカーが年半ばにはある程度の解決を見込んでいることから、パラジウムの価格も現在のレベルから大きく戻す可能性が高いと思われます。
Metals Focusの調査によれば2022年のパラジウム自動車触媒需要は8%増加し、267トンまで回復、2019年の273トンにはおよびませんが、ほぼそのレベルまで戻すとみられています。
需給バランスはまだ若干の供給過剰ですが、パラジウム価格は現在の安値からは大きく戻し、年後半には2150ドルを超えるレベルまで戻す可能性が大きいと思います。
ただ、3年や5年というもっと長い観点からは、プラチナによる代替そしてガソリン車のEVへの置き換えの流れがパラジウムの需要に大きく影響を及ぼす可能性があり、最終的にはプラチナ価格との入れ替えも十分あり得ると考えます。
来年一年であればパラジウムは今年の半導体不足からの自動車生産減による下げの部分の修正で上昇。
しかし3年を超えるような長期は上記のマクロ要因により下落を予想します。

 

(パラジウムの2021年のレンジ)
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(パラジウムの2021年のレンジ)
(ドル建てパラジウム)
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(ドル建てパラジウム)
(円建てパラジウム)
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(円建てパラジウム)

以上