(シルバーの動き)
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(シルバーの動き)

 

10月31日から11月12日まで英国グラスゴーでCOP26 (The 26th United Nations Climate Change Conference)が行われました。
世界の指導者たちが、パリ協定のゴールに向かっての政策を加速させるための会議です。
ここではインドと英国の指導者たちが、「One Sun, One World, One Grid(一つの太陽、一つの世界、一つのグリッド)」というイニシアチブを提唱し、太陽光エネルギーの世界的な拡大を訴えました。
IEA(国際エネルギー機関)によると太陽光エネルギーは今後10年、再生可能エネルギーのリーダーとして、太陽光電池の設置は毎年平均13%のペースで増加することが予想されており、2030年までの電気需要の三分の一を占めるとみられています。

(世界の太陽光発電設備増加による発電量の推移)
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(世界の太陽光発電設備増加による発電量の推移)

 

昨年、3,141トンのシルバーを使った太陽光発電産業はシルバーの総需要の11%を占め、2019年の3,070トンを上回り、5年前2015年の1,682トンのほぼ二倍の需要になっています。
2010年わずか6か国であった太陽光発電1GW以上の国の数は18か国に増加しました。
パンデミックによる様々な社会的な制約にもかかわらず、2020年の太陽光発電パネルの設置は138GWに達し、これは一年としては過去最高で前年比18%の増加となり、この分野での省シルバーの動きにもかかわらずシルバーの需要を2%押し上げました。
パンデミックで大きなダメージを受けた国々でも、太陽光発電パネルの設置とそこからのシルバー需要はほとんど影響を受けませんでした。
驚くべきは過去10年の間に太陽光発電パネルの省シルバー率は80%にもなっているにも関わらず、これだけのシルバー需要がこの分野によって生まれている、ということです。
(2011年を100%としたとき、2020年には30%にまでシルバーの使用率は下落。↓チャート)
2021年もまた記録を更新する年になるとみられており、163-183GW(現在のシルバーの使用率と変わらないとすれば3,700トンから4,000トンのシルバー需要にあたる)まで伸びると予想されています。
そして2022年には太陽光発電は200GWを超えて、シルバーの需要は4,300トンに達するとみられています。

(太陽光発電のシルバー需要とシルバー使用率の変化)
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(太陽光発電のシルバー需要とシルバー使用率の変化)

 

太陽光パネルマーケットはここ1年半、その材料コストが大幅に上昇してきました。
特にポリシリコンとガラス、そしてシルバー。シルバーはソーラーパネルの材料で二番目に高価であり、過去数年の平均の1.5倍の価格になっています。
2020年末の時点で太陽光パネルのコストの約11%がシルバーであり、当然、省シルバー化は常に試みられています。ただ、そのコスト削減のためのシルバー省力化は発電効率性とのバランスが取れるギリギリのラインが限界となります。
しかし、パネル自体の増加のペースがはるかに省シルバー化を上回り、今後もシルバーの太陽光発電のシルバー需要は増加していくでしょう。
もちろん、省シルバー化の進展は、コストの低減につながり、太陽光発電の大規模化と効率化も重なって、開発当初からはほとんど90%に近いコスト削減がもはやなされています。
それがより、太陽光発電の拡大を推し進めることになります。
その結果、太陽光発電が再生可能エネルギーの中でも最も競争力の高いエネルギーソースとなっているのです。
太陽光発電が地球温暖化阻止という長期的なゴールに対する技術として最良最大のものであるという認識は現在ではほぼ確定しており、この需要により、少なくともこれからの10年におけるシルバー価格の上昇の可能性は非常に大きいと言えます。

以上