シルバーの可能性
世界の貴金属アナリストの多くが2021年、シルバーの上昇はゴールドを上回ると予測している。実際2020年は12月25日現在、年初からゴールドは24%の上昇に対して、シルバーは45%上昇しました。そして3月のコロナショックにより12ドルに下がってからのパフォーマンスは115%にもなります。
シルバーの上昇予測のまず第一の理由はゴールドと共通です。低金利と米ドルの下落そしてインフレへの圧力が、ともに「通貨」の側面を持つゴールドとシルバーにとっては共通の上昇要因の最大のもの。世界各国の中央銀行のバランスシートは爆発的に膨張し、世界の経済大国のほぼすべてがほんの数年前まではおそらく「スキャンダル」とも呼ばれそうな「経済刺激策」を難なく、というよりもより積極的に推し進めています。FRBのバランスシートは2020年年初には4.2兆ドルであったものが、現在は7.3兆ドルとなりまだ膨らみ続けています。米国政府の財政赤字は2019年の3倍にまで膨らみます。
これだけの負債を抱えながら、市場は全くそれを無視するような動きになっています。唯一ドルの価値が過去2年間下がり続けており、ゴールドとシルバーの価値が上がっていること以外は。そしてこの流れ、もしウイルスに対してワクチンが功を奏し、ずっと続いている「マネー印刷の大増発」の副作用であるインフレがいよいよ加速される可能性があります。世界中での莫大な経済刺激策で市場へ投下される資金、そしてFRBを代表とする世界の中央銀行の低金利政策が2023年まで続くと保証されているのなら、なおさらのことです。この世界の金融情勢を考えると「マネタリーメタル」(通貨の側面を持つメタル)としてのゴールドとシルバーは上昇せざるを得ないでしょう。特にゴールドとくらべてその市場規模が圧倒的に小さなシルバーはその動きもより大きくなります。30ドル超えを予想するアナリストが多いのも当然といえるでしょう。
そしてシルバーにはゴールドにはないもう一つの強気要因があります。それはゴールドと違う、工業用メタルとしての側面です。ゴールドでは需要のわずか10%が実際に使われる工業用需要ですが、シルバーの場合、需要の50%が工業用需要であり、その中の10%が太陽光発電のソーラーパネルに使われています。そしてバイデン新政権のこれからの政策課題としておそらくコロナ対策に次ぐ重要性を与えられているのが、環境対策です。バイデン政権としては、トランプ政権とのはっきりとした違いとして「グリーン革命」上げており、炭素社会から再生可能エネルギーへの動きを重視し、その中で太陽光発電の占める位置も非常に重要なものとなります。そしてこの「カーボンニュートラル」の動きは米国に限らず、2050年をその目標時期とした欧州のグリーンディール、中国は2060年をカーボンニュートラルゴールとしていること、そして日本も2050年にカーボンニュートラルを目指すという意欲的な目標を掲げています。太陽光パネルの需要は拡大する一方となり、その核心と言っていいシルバーの必要量は飛躍的に増加するでしょう。それに対して世界の銀鉱山生産は、2020年は6.3%の減少の24300トンと予想され(Metals Focus社)、これはコロナウイルスによる鉱山や鉱山都市のシャットダウンが影響してより大きなものとなっていますが、シルバーの鉱山生産は2016年から一貫して減少しています。これは世界の銀鉱山鉱石のシルバー含有率が下がっていること、そして新たなプロジェクトが始まっていないことが要因であるので、今後もこの傾向は変わらないと思われます。金融要因での投資家の買いに加えて、実需サイドでの需要の増加、そして供給の減少という状況を考えると2021年はおそらくゴールドを遙かに超える勢いでシルバーが上昇する可能性が高いのではないでしょうか。
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