世界での脱炭素社会への動きが進んでいます。日本も管首相の所信表明演説で脱炭素社会の実現に向けて「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と表明しました。日本は遅ればせながら、の印象が強いですが、EUを含む70以上の国々が脱炭素社会を2050年までに実現するという目標を掲げています。(中国は2060年)この動き、もはや後戻りのできない地球的な動きと考えてよいでしょう。

 

欧州では欧州グリーンディール(EGD)という全エネルギーの中の再生可能エネルギーの割合を2030年には2018年の約2倍の32%にする目標を掲げています。

 

 

 

(欧州グリーンディールでの再生可能エネルギーの発電割合)
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(欧州グリーンディールでの再生可能エネルギーの発電割合)

この脱炭素の動きの中で重要な役割を負うのが、グリーン水素、つまり水を再生可能エネルギーで電解して取り出した水素をエネルギーとして使うということです。この水素はその組成の段階から一切化石燃料を使っておらず、真のクリーンエネルギーだということができます。現在もっとも先端を行くEUでは、この再生可能エネルギーを使った水電解施設が、現在は35MW(メガワット)の発電能力ですが、これを今後10年2030年には40GW(ギガワット)= 40000MWまで増加させるという計画をたてています。これは全エネルギーの32%に当たるという非常に意欲的な計画です。

(EU再生可能エネルギーを使った水電解能力の拡大予定)<br/>
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(EU再生可能エネルギーを使った水電解能力の拡大予定)

ではこの水素社会においてプラチナはどのような役割を果たすのでしょうか?もちろん、まず水素を燃料とした燃料電池車(FCV)の触媒として、使われるということです。ディーゼル車に使われるプラチナの量の10倍のプラチナがFCVに使われます。もちろん自動車業界としては、この量を減らすべく絶えず努力が続いて行き、その量は減っていくものと思われますが、それでもディーゼル車より数倍は多いプラチナ需要が新たに生まれる可能性があります。そしてプラチナはイリジウムとの組み合わせで水電解の触媒としても使われます。現在の試算ではEUと中国の2030年までの目標で必要な水電解触媒としてのプラチナの量は600,000toz (約18.6トン)になるとされています。

現在の水素生産における再生可能エネルギーによる水電解の割合はわずか2%未満。76%が天然ガス、22%が石炭であり、この割合は脱炭素の動きを背景に2030年までに大きく伸びると考えられます。

 

(水素組成における水電解の割合)<br/>
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(水素組成における水電解の割合)

 

そしてその結果、ここ2年は供給不足になっているプラチナ需給をよりタイトなものにする可能性があります。

(プラチナ需要供給のバランス)
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(プラチナ需要供給のバランス)

 

投資家もじわじわとこのプラチナの将来の可能性に目を向けつつあるようです。北米のプラチナETFの残高は3月の安値以来543000toz(約16.8トン)の伸び。世界のETF残高も5月に底を打ち、792ktoz (24.6トン)の増加。残高は118トンまでに。ゴールドに比べての割安さと水素社会需要も投資家の背中を押したものと思われます。

(北米のプラチナETF残高の伸び)
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(北米のプラチナETF残高の伸び)

 


 

(世界のプラチナETF残高)
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(世界のプラチナETF残高)

 

このETFの残高の伸びにも関わらず、プラチナの価格は900ドルを割り込み、ゴールドとの値差は1000ドルを超えたままです。5年前とくらべて上がっていない貴金属はプラチナだけです。この割安さ、出遅れ状況は必ず訂正されるものと思います。将来的可能性に投資をする、それが今のプラチナの魅力ではないでしょうか。

(ゴールドとプラチナ相場とその値差の過去5年)
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(ゴールドとプラチナ相場とその値差の過去5年)

以上