ゴールド以上にシルバーへの強気の見方が増えて来ています。その理由の第一は、ゴールドと同じく、世界の金融市場にあふれるマネー。世界の金融当局による金融緩和、そして政府による財政出動は、コロナウイルスによる景気後退を防ぐためにはどうしようもない状況だろう。世界に溢れる資金はその投資対象として貴金属ではまずゴールドに向かいました。そして、その次にゴールドに対して極端に割安になったシルバーに入り、金銀比価が3月の125対1という歴史的にみても例のないほど割安になったシルバーに投資資金が流入し、8月には70対1まで大きく戻し、現在は80対1程度で落ち着いています。価格でみると3月は12ドルまで下落したものが、8月に一時30ドル目前まで上昇、現在は23ドルから25ドルのレンジでの推移となっているが、しかしこのレベルよりはるかに高くなるという強気の予想が根強いのです。
 

 

(シルバー価格と金銀比価の動き5年)
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(シルバー価格と金銀比価の動き5年)

上記の金融要因に加えて、今後の世界の環境問題に対する「再生可能エネルギー」への動きとそれによるシルバーの需要増加への見通しが、ゴールドにより増してシルバーの強気の見方を生み出しています。

再生可能エネルギーの発展をここから10年最もリードしていくのは太陽光発電であるという見方が強く、国際エネルギー機関(IEA)の試算によると太陽光発電は一年あたりの平均で13%のペースでその設備が設置され、2030年までの電気需要の伸びのほとんど3分の1をカバーするペースになるとみられています。そしてその後もどこでも最も手に入れやすいエネルギーとして、コストの低減と政策的なサポートによりその成長は止まらないと予想する向きが多いのです。

(2050年電力単位発電設備設置予想とこれから20年の発電方法の割合の変化)
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(2050年電力単位発電設備設置予想とこれから20年の発電方法の割合の変化)
By IEA(国際エネルギー機関)

現在でさえ、この太陽光発電でのシルバー需要(ペーストとしてパネルに塗られる)はもはやシルバーの総需要の中の最も大きなものとなっており、昨年2019年は総需要の10%、3000トンという規模になっています。そしてこれが2050年までにはさらに50%もの伸びが予想されています。

 

もちろんその伸びは太陽光パネルの設置と同じペースという訳にはいかないでしょう。太陽光パネルのシルバー使用量をなるべく減らしていくという努力が常になされているからです。2019年現在はシルバーの使用量は1セル辺り111mgであるが、2030年にはそれが半減50mgになると予想されています。しかし、シルバーを完全に他のものに代替することは困難であり、どれくらいシルバーの使用量を減らすことができるかは、効率性と省シルバーのバランス、そしてシルバー価格にも関係してくるでしょう。ただ、それがシルバーの今後の使用量をなくすことは考えにくく、おそらくは大方の予想通り、太陽光発電におけるシルバー需要は増え続けることは確実であると思えます。世界中での金融緩和と財政出動による増大した投資資金、そして同じく世界中での化石燃料から、再生可能なグリーンエネルギーへの流れはもはや逆戻りのできないところまで来ているといえるでしょう。この原稿を書いている時点では米国の大統領選挙がどのような結果となるかはわかりませんが、もしバイデン大統領が誕生すれば、彼の環境政策は、太陽光発電に巨額な資金を投入する見込みであるだけに、シルバーにとってはこのうえなく強気な条件が揃っていると言えるでしょう。

 

 

以上