5月第二週は毎年「ロンドン・プラチナ・ウイーク」という、世界中のプラチナ関係者(生産者、需要家、トレーダーなどプラチナを取り扱う人々)が一斉にロンドンに会するイベントがありました。私も毎年出席しているのですが、今年は残念ながら行くことができませんでした。
この機会にプラチナにかかわる各社からいろいろなレポートが発表されます。その中のひとつMetals Focusから「Platinum & Palladium Focus 2019」が発表されました。その要旨をまとめておきます。
「Platinum & Palladium Focus 2019」要旨:
(プラチナとパラジウムの需給グラフ:+0 供給過剰、-0 供給不足)
・ 2018年に続いて2019年そしてそれ以降もプラチナとパラジウムの対照的な需給構造は続く。
・ プラチナは2018年は10.8トンの供給過剰。一方パラジウムは25.5トンという大きな供給不足。
・ 2019年の予想は、プラチナは19.6トンの供給過剰、パラジウムは17.9トンの供給不足。その結果、プラチナの地上在庫は年末に302トンとなり、2010年年初の215トンから大きく増加している。一方パラジウムは、ほぼ一貫して地上在庫は減り続け、2010年年初の550トンから、2019年年末には400トンまで減少する予想である。
「プラチナ」
(ドル建てプラチナ)
(円建てプラチナ)
・ 2018年のプラチナの自動車触媒需要は3年連続で減少(3%)。主要なディーゼル車の市場である欧州でのさらなる不調が主な要因。しかし2019年の減少分は2018年よりもは少なくなる見通し。排ガス規制が一層厳しくなる見込みと、トラックなどの大型ディーゼル車が目に見えて増加していることから。
・ 2019年は宝飾市場でも3%の需要減の予想。中国での落ち込みが最大の理由。現物投資は15%の減少だが、これは2018年が非常に強い数字であったことが大きい。
・ 以上の結果からプラチナの総需要は4年連続での減少となり、前年比1.2%の落ち込みで239トンとなる見込み。
・ プラチナ供給面は、鉱山生産は南アの増産で、3%の増加予想。南アはランド安とコストが押さえられたために生産が増加。
・ これを踏まえたメタルズフォーカスのプラチナ相場予想は以下の通り。「投資家のセンチメントは2018年ほど弱気に傾いていない。ゴールドへの総体的な強気モードに伴い、今年の後半はさらに上昇が期待できる。しかし、需給がそれを助ける状態にはなく、それがプラチナの重しになる。2019年のプラチナの平均価格予想は875ドル。」
「パラジウム」
(ドル建てパラジウム)
(円建てパラジウム)
・ 自動車触媒需要は2019年は3.6%の増加で、史上最大の267トンに。ほとんどの地域で、排ガス規制がより厳しくなり、触媒でのPGMの使用量が増したこと、そして欧州におけるガソリン車の比率の増加がその要因。また、世界中、特に米国で大型の乗用車が好まれるようになっていることも触媒の量が増える要因。
・ またガソリンエンジン自動車触媒のプラチナによる代替の動きはなく、それもまたパラジウムにとっては強材料。そしてパラジウム以上に高騰しているロジウムの一部的にパラジウムによる代替が発生していることもパラジウムの使用量を増加させている。
・ パラジウムの供給は4%増加して314トンとなる見込み。鉱山生産が5%増加で223トンとなるのが牽引。ほぼすべての主要生産国で生産が増加する見込みで、唯一減少するカナダの分を相殺している。リサイクルによる二次回収も。3%の増加の見込みで91トン。これは自動車触媒回収が増えたため。
・ 短期的には中国、米国の自動車売上げの減少や、小型乗用車へのパラジウム代替の動きといった向かい風はあるが、この先予測がつく限りの将来でのパラジウムの供給不足は変わらない。2019年のメタルズフォーカス社の相場予想は、投資家は最終的にはパラジウムに戻ってきて2019年の平均価格は前年比45%アップの$1490を予想している。
以上がMetals Focus社の予想の骨子ですが、これが発表されてからやはりプラチナが目立った下げを記録しています。大底とみる800ドル近くまで下げてきました。円建てでもふたたび3000円を大きく割り込んでおり、今年年初の安値のレベル(2800円)までほぼ戻りつつあります。投資家心理が冷え込み再びプラチナから資金が逃げているようです。ゴールドが大きく上昇するといった外部的なサポートがないとプラチナ独自ではなかなか強材料が見当たりません。しばらくはふたたび安値圏での推移となってしまいそうな雰囲気です。
以上