イタリアのサルビーニ副首相が、2452トンのイタリア金公的準備を、イタリア中央銀行からイタリア政府に移管する可能性を語って話題になっています。

イタリア政府は、サルビーニ氏率いる極右政党「同盟」と、極左政党「五つ星」との危うい連立政権です。反移民を掲げる極右と、反体制・反EUの極左が共存するという珍現象。

五つ星は、企業による採用と雇用を容易にする労働市場改革を「若者は結婚の計画や休暇をあきらめざるを得ない」と批判。同盟は、イタリアが欧州の「難民キャンプ」にならないように、移民を帰国させると主張しています。難民送還のチャーター機が飛ぶとイタリアの空港は閉鎖するとか、難民船の着岸を拒否したりしてきました。

 

さて、今回の金騒動の発端は、サルビーニ氏が、イタリア銀行危機の責任はイタリア中央銀行にあると非難して、同銀行総裁解任を要求していることに始まります。

「(ばらまきの)財政資金捻出のため金を売るわけではない。金を中央銀行から政府に移転しておきたいだけだ」と述べていますが、「それ(金売却)も、面白いアイディアだ」とも語っています。

いっぽう、五つ星運動の創始者でコメディアンのグリリョ氏も、昨年、財政赤字を賄うために公的金を売却することを提案しています。但し、彼は、今は、五つ星運動の「象徴的存在」に成り下がっています。さすがに政党としては、言動が過激すぎるのでしょう。

 

なお、「同盟」と「五つ星」は、今年5月に予定されているEU議会総選挙で、票を争うことになります。既に、地方選挙では、同盟の候補が勝利して、五つ星は劣勢に立たされています。

EU議会で、イタリアの「同盟」が30%近い票を獲得すれば、イタリアの発言権は強まるでしょう。特に、ドイツはメルケル首相没落傾向、英国は大混乱中、フランスも「黄色いベスト」の反政府運動でマクロン大統領支持率急落というなかで、相対的にイタリアが浮上する可能性があります。

サルビーニ氏も、決して、EU離脱までは考えておらず、域内でのリーダーシップを強めようという腹のようです。

更に、五つ星のリーダーであるディマイオ連立政権副首相が、パリまで出向き、反マクロンの「黄色いベスト」支持者たちと会ったことで、フランス政府が激怒。駐イタリア大使を召還する外交的措置を発表しました。ディマイオ氏は「変革の風がアルプスを渡った」と刺激的表現で語っています。俄かに、フランスとイタリアの関係が揺れ始めたのです。もともと、フランスのマクロン大統領は、強いEU支持派で、EU内での発言権を高める言動を繰り返し、欧州内のポピュリスト・右翼の格好の非難の標的になっています。マクロン大統領は、ポピュリストを「ハンセン病」と呼び物議をかもしたほどです。イタリアのポピュリスト政権にとっては、国内支持を取り付けるための格好の存在ですね。

サルビーニ氏は、マクロン大統領がアフリカから欧州への不法移民を促進していると非難。ディマイオ氏は、「EU加盟国は財政赤字をGDP3%以内に収める」ルールに関して、マクロン大統領が、自国の財政赤字を棚に上げ、イタリアのルール違反を批判して偽善的だと非難しています。

更に、イタリア連立政権は、フランスの反マクロン勢力である極右政党「国民連合」とも共闘体制を示しています。あの懐かしい()ルペン女史の極右政党ですよ。彼女は、今や、英国EU離脱の惨状を見せつけられEU残留派に転身していますが、反EU感情は相変わらず強く、あれこれEUに口出しされたくないと強調しています。

なお、サルビーニ氏は、親ロでプーチンと近いことでも知られます。昨年10月、モスクワを訪問。「EUの国と比べると、ここは我が家のようだ」、そして、ウクライナ問題でのEUの対露経済制裁を「狂気」と表現しました。トランプ大統領を真似たかのような「イタリア第一主義」的発言も目立ちます。コンテ・イタリア首相がトランプ大統領を訪問したときには、トランプ氏が「必要とあればイタリア国債を購入して助ける」と語っています。

ブレクジットばかりが話題になりますが、欧州漂流状態ですよ。

 

今日のスイーツ写真は、「ボネ」。今日話題のイタリアはピエモンテ州(北イタリアは「同盟」の支持基盤)のお菓子。アマレット風味のクッキー入り、チョコレートプリンなんだけど、美味!@自由が丘マガーリ

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