NY市場の話題は、圧倒的にトランプ大統領スキャンダルに集まっている。米中通商対話が終了したが、経済紙電子版アクセスランキングを見ても上位は殆どトランプ側近有罪関連記事が並ぶ。米中貿易戦争関連記事が埋もれている。ここに日米市場の温度差を感じる。

 

トランプ氏は反論の中で、浮気相手の女性への口止め料支払いは認めた。しかし、「自分の財布から出たカネ」で、選挙資金法には抵触せずとの見解だ。マイケル・コーエン元顧問弁護士に対しては、裏切者扱いで「小者弁護士で、彼を使うことは薦めない」とこき下ろす。コーエン氏の弁護士は「私の顧客は、モラー特別検察官が興味あることを語るかもしれない」と意味深に述べている。一方、マナフォート元選対委員長には同情的で、「いい奴だ。ワシントンのロビイストなら普通にやっていること」と弁護している。

市場が注目したのは、「私が万が一弾劾されたら、市場はクラッシュになる。皆が貧しくなる」との脅しめいた発言だ。「減税、規制緩和で絶好調経済に貢献した人物をなぜ弾劾できるのか」と語る。

市場は弾劾の可能性は非常に低いと見ているのに、あえて引き合いに出すことで、自らの本音の心配を晒しているようなもの、と見られてしまう。

ジャクソンホールでの中央銀行フォーラムでパウエルFRB議長が何を語るか注目されているが、その発言に対するトランプ・ツイートも市場はフォローすることになりそうだ。

なお、ジャクソンホールで市場の関心は、パウエル氏がFOMC後の記者会見で使った「for now当面」の一言。「緩やかな利上げを続けます、当面は」と最後にポツリと付け加え、これが何か月程度を意味するのか、市場には様々な観測が流れた。イエレン氏はフォワードガイダンスで「for an extended period」という「当面」よりは長い期間が連想される表現を使っていた。for nowとは口語的表現でおよそ堅い中央銀行家らしくない物言いだが、タカ派的発言と解釈されている。ちなみに前回の金融政策決定会合後記者会見で、黒田総裁も「for an extended period」という英語表現を使う一幕もあった。今回のジャクソンホールでは、BOJ日銀への注目度が非常に高いことが特徴だ。欧米市場では「ベイビーステップ=赤ちゃん歩きペースの緩和解除」と見られている。

 

なお、ジャクソンホール会議直前の債券市場では、米10年債と2年債利回り格差がいよいよ0.2%ギリギリまで縮小してきた。

30年債 2.98%

10年債 2.82%

5年債 2.72%

2年債 2.62%

3か月債 2.08%

アンクルサム(米国を表わすニックネーム)に3か月貸しても、30年貸しても、金利は2%台。どうみても異常な状況だ。市場では「2%クラブ」と言われる。

この現象が景気後退の前兆なのか。議論は分かれる。ジャクソンホールでもホットな話題になりそうだ。

 

NY金は1200ドルがレンジの上限となりつつある。まだ二番底もあろう。

9月、12月米利上げを、金利を生まない金の市場は、これから、こなさなければならない。需要の7割を新興国に依存する構造ゆえ、トルコ危機の波紋が効く。

 

一方、中期的には1200ドル以下は底値圏との見方に変わりはない。メディアで私の予測が色々報道されるが、短期なのか中長期なのか、明示されていない記事が多い。