延々と続いたパウエル新FRB議長「お目見え」議会証言終了後、1時間ほどで、イエレン・バーナンキ対談(ブルッキングス研究所主催)が開催された。

市場としては、FRB議長の現職、前職、元職の発言を数時間で比較できる、という珍しい機会である。

パウエル氏と議員たちとのやりとりで最も目についた言葉が「過熱」(オーバーヒート)。

パウエル氏を任命したトランプ大統領の「目玉政策」ともいえる大型財政政策に対して、FRBの利上げが後手にまわれば「過熱」リスクはないのか。

パウエル氏の発言は、中央銀行の雇用と物価のバランス重視を再確認しつつ、過熱の可能性もなしとはせず、との論調だ。

市場は「金利上昇」に極めて神経質になっている。米10年債利回りも、パウエル氏の予定原稿読み上げの段階では動かなかったが、議員たちとの質疑応答に入るや、スルスルと2.9%台を再突破した。

ハト・タカ両派の見解を両論併記しても、市場は、タカ派的発言のほうに反応した。

ドル高、株安、金安の展開だ。

その直後、別の会場で、イエレン前FRB議長も、壇上から「パウエル新議長が議会証言で語っていたが、過熱のリスクにも注意を払わねばならない」と語った。

イエレン氏は、19人の参加者の意見をまとめるFOMCでの苦労を「部屋の色を決めるデザイナー」に例えた。

それぞれ好みの色は異なる。

でも、最終的には、ほぼ全員が、特定の色に収れんして、「それでも悪くない」程度に合意するのだ、と説いた。

そのFOMC決定結果を「透明に」情報を市場に伝えることが重要。

後任のパウエル氏にも、情報の透明性が求められる、との「アドバイス」を壇上から送った。

FRBバランスシート縮小に関して、市場への情報開示を誤り「バーナンキショック」を引き起したバーナンキ氏が「私とイエレン氏との間に、FRBにも(透明性について)技術革新があった」と苦笑しつつ反省答弁する一幕もあった。

なお、好調米経済の死角は、と聞かれ、バーナンキ元FRB議長は「地政学的要因と通商問題」と断じ、イエレン前議長も「同意」した。

結局、パウエル新議長は、市場大混乱を引き起こすことなく、金利上昇を追認する程度でそつなくデビュー戦をこなした、といえよう。

ダウ平均は下落したが、この程度のボラティリティーは今の市場で「想定内」の範囲だ。

いっぽう、新議長議会証言の緊迫感に比し、現職のプレッシャーからは解放されている2人には懐古する心理的余裕と「本音」もにじむ。

リーマンショック後の有事対応として非伝統的金融政策を導入した元職。

その後始末として金融正常化の道筋をつけた前職。そして、ばら撒いたマネーの回収を含め、本格的に出口戦略を実行するという「損な役割」を担う現職。

利上げ加速となるのか。FRBと市場の神経戦は、新監督のもとで新たなラウンドに突入した。

 

なお、イエレン・バーナンキ対談のwebcastは↓のブルッキングス研究所のサイトで再生視聴できる。

1時間半ほどだが、イエレン氏の今だから言える失敗談もあり、実に興味深い。

 

https://www.brookings.edu/events/a-fed-duet-janet-yellen-in-conversation-with-ben-bernanke/?utm_campaign=Economic%20Studies&utm_source=hs_automation&utm_medium=email&utm_content=60520507

 

 

最後に、読者の方々から、「アラブの王様が金を10トン売りたいとのことで買い方を探している。どうしたらよいか」とか「ロスチャイルドの金を大量に売却するとのことで、手伝ってくれないか」などなど、プロの眼から見れば、完全に怪しい話がと時々持ち込まれます。

だったら、欧米の大手銀行に頼めば良いではないですか。ドル売るのと同じですよ。

それを、なぜか、「金」というと、特別視するのですね。気をつけてください!