日本時間朝5時のNY大引け時点では、市場は楽観ムードに包まれていた。

米中貿易戦争の材料は出尽くし。雇用統計も物価安定、雇用好調の適温経済を示す。

これからNY市場は決算シーズンに入るが、企業業績は好調。株価は連騰。

ところが朝6時前後にブルームバークが「トランプ、対中国追加関税発表へ」の第一報流したところで、「まじかよ」「まさか」一瞬耳を疑った。

具体的内容「追加関税規模2,000億ドル、約22兆円」。

第一弾の500億ドル規模とはけた違い。市場は楽観視していたので動揺。

しかし、この日本時間朝5時6時は市場の流動性が最も薄い時間帯。動くにも動けない。

24時間電子取引はオープンしていても、値は気配値程度。逆突かれたトレーダーは蛇の生殺し状態。

そのときOA中だった日本の経済番組は「市場は貿易戦争リスクを克服し晴れ模様」などと能天気。

瞬間的にマーケットの景色が変わってしまって、筆者もかなり動揺した。

その後、アジア市場がオープンして日経平均も400円近い急落。

円は買われ、金は売られ。この「金は売られ」がよく分からないのだけど、市場が動揺すると、とにかくリスク減らしで金も巻き込まれるのだ。

金は売って現金化しやすい対象なので、市場の「ATM」と言われるほど。

 

とにかく、トランプ大統領もいい加減にしてほしいけど、貿易戦争リスクは深刻度を増すばかり。

究極スタグフレーションのリスク。関税上乗せで物価は上がるが経済成長は減速するという、ルーズ・ルーズのシナリオ。

よく貿易戦争に勝者なし、といわれるけど相場の世界でも全員負けとなる。

マクロの視点では、拡大均衡から縮小均衡へ大転換。

 

今回の対中国、新たな追加関税2,000億ドルについては、さすがに身内の共和党議員からも、ブーメランのごとく負の効果が米国民に跳ね返る、と批判の声があがる。

中国の米国からの総輸入額を上回る規模ゆえ、ここから中国の報復は追加関税ではなく、企業への嫌がらせ、米国製品不買運動など、「量」から「質」へ変わってゆく。

かなり、たちが悪い報復措置となりそう。

 

いっぽう、この機会とばかり、欧州と中国が接近中。

特に中国市場が最大顧客のドイツの首相メルケルさんの北京詣でが増えそう。

中国も李首相が訪欧中。

勿論、欧州・NATOにとって中国の軍事リスクは重要だから、対米全面協力とはならないが、中国はほくそ笑んでいることだろう。