先週金曜のNY市場での展開は期せずして絶妙のタイミングの展開となった。

まず、絶好調に近い雇用統計。

新規雇用者数が事前予測を倍近く上回る31万2千人。10月、11月分は5万8千人の上方修正。平均時給は前月比0.3%増。年率で3.2%。失業率は3.9%と前月比上昇したが、労働参加率が63.1%に上がった。これまで就職をあきらめて統計上の「失業者」とカウントされなかった人たち、再び仕事探しを始めて「失業者」のカテゴリーに登場したゆえの失業率上昇と解釈される。

ところが、これほど良い雇用統計を見せつけられた市場は、素直に喜べなかった。

「データ次第」のFRBが、利上げ回数を増やす可能性が浮上したからだ。

しかし、そのモヤモヤ感は2時間後に解消された。

パウエルFRB議長が「賃金上昇とインフレの関係は薄まっている」と語り、雇用統計が良くてもインフレは低迷を改めて肯定したからだ。

場所はアトランタのアメリカン・エコノミック・アソシエーション。前FRB議長イエレン氏と元議長バーナンキ氏と3名でのパネル・ディスカッションであった。

パウエル現議長は、珍しく用意した原稿を読み上げる慎重な姿勢で臨んだ。

いきなり「利上げは急がず忍耐強く」と語り、アルゴリズムは、このキーワードに即反応して、株買い注文を発動した。

更に、市場が懸念するFRB資産圧縮プログラムについても、「決まったコースはない。「変えることもある」と明言。前回FOMC後の記者会見での「予定通り進める」から180度の転換である。市場は「パウエル氏は過ちを認めた」と判断した。

なお、このパネルで会場の大きな笑いを誘ったのは「大統領から解雇通告受けたらどうする」とのストレートな質問に一言「NO」と答えたときだった。

 

とにかく、市場とのコミュニケーションに失敗が目立ったパウエル議長が市場の期待に応えたことの意義は大きい。

本欄でも前回に言及したことだ。

「マーケットの惨状を打開できるのは、ただ一人。パウエル議長しかあるまい。

本日は、歴代FRB議長とパウエル現議長との「パネル・ディスカッション」が予定されている。前任者たちが市場に放流した流動性を回収するという「損な役割」を引き受けたパウエル氏が、どのように語るか、注目される。

要は、FRB議長が市場に寄り添う意思を明確に示すことだ。利上げ当面様子見更には一時停止、更に、FRB資産圧縮停止などが期待される」

それゆえ、パウエル氏の満額に近い回答と評価されるのだ。

特に金融政策要因は、政治・地政学的要因と異なり、影響が一過性ではない。市場の潮流を変える。

とはいえ、市場内には、懐疑派も少なくない。

今回の雇用統計には、政府機関一部閉鎖による80万人に近いとされる無給、自宅待機の公務員数は反映されていない。そもそも雇用統計は遅行指標だ。先行指標のミシガン大学消費者信頼感指数の中の6か月先の雇用の項目では、不安感が強く滲んでいる。パウエル発言も「データ次第」で再び180度転換する可能性がつきまとう。

金融政策関連で今後の注目点は、利上げと資産圧縮(QT)という両面引き締め作戦のバランス配分だ。金利が基本的金融政策ツールで、QTは補完的役割とされる。しかし、市場はQE(量的緩和)には慣れたがQTは初体験だけにサプライズ要因になりがちだ。

財政政策と金融政策のポリシーミックス(政策の組み合わせ)も重要だ。

これまでは積極財政・金融引き締め方向だったが、今後はネジレ議会でいきなり政府機関閉鎖が生じたほどに財政政策発動のハードルは高まる。いっぽう、金融政策では「利下げ」確率が市場では上昇中だ。

このポリシーミックスの変化は、2019年の市場を占ううえで、見逃せない要因となりつつある。

NY金は1280ドル台で足踏み。

今年も、商品としての需給要因より、金融市場の株・債券・為替に振り回される日々が続きそうだ。金は「世界経済を映す鏡」。金価格を見れば世界が分かる。

 

週末の銀世界から、また、俗世界に戻る()

明日朝、TBSあさちゃんとテレ朝羽鳥モーニングショーに出演予定だけど、ゴーン出廷の報道が飛び込むと飛ばされる可能性大。

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