カリスマ投資家ジムロジャーズ氏が来日。連日メディアでインタビュー記事・番組が流れた。
ジムといえば「金」。投資の神様が最後に辿り着いた究極の資産が「金」である。それだけに説得力がある。シンガポールの豪邸には金製品コレクションが並ぶ。
そして、10年来の友人として感じたことは、彼の見方がほぼ一貫してぶれていないことだ。
今回は特に時節柄、彼が次の投資対象として北朝鮮に注目していることが話題になったが、
これは、4年前からの彼の変わらぬ自説だ。朝鮮半島が統一され、日本の手ごわい経済的ライバルになるとの主張を最初に聞いたときは、日本人として、かなりの抵抗感を感じたものだ。その頃から、あのてこのてで、北朝鮮への投資手段を模索していた。この先見性は、バイクでの世界冒険旅行で醸成された彼独自の「体感」に裏付けされた、生来の「動物的臭覚」による。いわゆる「天才肌」であろう。統計数字を並べた「秀才」アナリスト流の語りではなく、易しい単語を使って分かりやすく説明するのがジムロジャーズ流だ。それゆえ、世界中の個人投資家に人気がある。NY証券取引所のフロアーで彼とテレビ対談中に、たまたま訪問していた中国人投資家集団にサインをせがまれ囲まれ往生したこともある。日本で富裕層向けセミナーが開催されたときには、参加料が数十万円(100万に近い)でも多数が聴講していた。
来日した後には、必ず自分の英語の発言が正しく日本語で伝わったのか、筆者に確認してくる。
今回は、日本株を昨年秋に売却した件が話題になった。筆者のこれまでの理解では、長期的に日本株と円には弱気派だが、短中期では、情勢次第で柔軟に対応するはずだ。今朝たまたまチャットしたときに、そこのところを確認したのだが、やはり「あれはあくまで長期的見解」ということであった。「少子高齢化で外国人労働者にも抵抗感が強い国」の稼ぐ力が弱まるというのが口癖だ。筆者がシンガポールの豪邸に経済対談のため赴くと、必ずのように「君!シンガポールくんだりまで来て経済の話をするくらいなら、もっと子作りに励め。君の国に最も足りないことだろう」と彼独特の語り口で諭す。とはいえ、なんらかの理由で日経平均が暴落するような局面があれば、買い出動する用意がある。彼が売却したという日本株ポジションを買った日は、東北大震災当日であった。日本株買い注文を入れたあと、その晩は日本への応援の気持ちでシンガポールの日本料理屋に家族全員で出向いたという。今後、日銀の出口戦略で株ETF保有の後始末が市場を揺らすときには買うかも、とつぶやいたことを覚えている。中国に関しても、債務問題など気になることだらけだが、基本的に中国株は長期保有の姿勢だ。そもそも、これからは中国の時代と宣言して米国から移住してきた。「米国だって、バブル、バブル破綻を経て、長期的に成長してきた」。中国も例外ではないと語る。
今後の投資先として、今回は、ベネズエラとかジンバブエを挙げていたが、これも「Buy disaster」(災害は買い)との彼の投資信条に基づく。8年前、誰も目をくれなかったミャンマーに着目して、その後、ミャンマーブームになると、「混み過ぎてきた」のでサッサと売り払った。ウクライナ侵攻でロシア株・ルーブルが暴落しているとき、せっせと買いに走り、トランプ政権誕生直後のロシア株急騰局面では一早く手仕舞っている。そして、現在は再び経済制裁対象国ロシアに注目している。
更に次の投資先として、彼はカザフスタンに着目していて、スタッフにカザフスタン人を雇用するほどの熱の入れようだ。たしかに、一帯一路の要衝で資源国だとして有望だ。しかし、今回は多くを語らなかったので、尋ねたら「次の(訪日の)お楽しみ」とかわされた。
最後に彼に投資に最も影響を与えている人がいる。
それは、二人のティーンエイジャーの娘さんたち。76歳の御大の孫ではない。中国語学校に通っていたころは、毎日、午後3時には自家製リヤカー状の乗り物で出迎えするので、インタビュー時刻も3時を外して、と言われたものだ。こうなると、普通のお爺ちゃんと変わるところはない。それゆえ、彼の投資も、「全ては可愛い娘たちに残すため」。それゆえ、「金」も全て娘のためと言って憚らない。ジョージソロスと一緒に元祖「ヘッジファンド」を立ち上げ、大成功を収めたのだが、今や超長期投資家に変身。たまに、市場が大きく変動すると、参入してくるのだ。
そして、今日の写真は、雪の上で食べるバレンタインチョコ。これが適度に冷えて格別な味。豪徳寺の「SUDO」のはいけるね(笑)
添付写真
アラバマの片田舎出身で、ウオール街で初めての職場だったというビルにて。