「米国民に他意はない。いずれ常識が戻るだろう。しかし、今回の決定にその兆しは見られない」「過去150年の歴史で、ノルマンディーからアフガニスタンまで戦いと死を共にしたではないか。そのカナダが、米国安全保障上の脅威とは信じがたい」
トランプ政権の追加関税発動を受け、トルドー・カナダ首相の苦渋に満ちた記者会見発言だ。
同じく、これまで除外されてきた鉄鋼25%アルミニウム10%の追加関税適用を6月1日づけで解除されたEUの反応は、官僚的で憮然と事務的に報復関税を示唆する。
米国の鉄鋼アルミの国別輸入量を見れば、中国は僅かだが、EUは大きい。貿易戦争が、いよいよ実弾発射の交戦状態にエスカレートした印象を受ける。
米国通商幹部は、中国で過剰生産される鉄鋼が第三国の製品経由で米国内に輸入されている故、同盟国に対してもやむえない措置と説明する。
中間選挙をにらむトランプ大統領の一策とも見られるが、米国内の反応も複雑だ。
鉄鋼アルミ国内価格上昇による製造業コストアップも、いよいよ無視できない状況だ。
ピーナッツバター価格に至るまで市民生活へも影響を与える。
中間選挙で共和党不利の状況が、トランプ大統領の焦りを生み、保護主義が激化するという負の連鎖の影響は、世界の株価にも波及する。
NYダウ平均も、イタリアリスク後退で反騰していたが、再び251ドル急反落した。
なお、自動車に対する25%課税案に関しては、特定の国名は挙がらず、同盟国側から憂慮の声が相次いだ。しかし、今回は、対象同盟国が特定されている。
日本側の視点では、これまで、同盟国の中でなぜ日本が「追加関税適用除外国リスト」に入らないのか、との不満があったが、今回の措置は、その状況も変えた。
今後、G7の舞台などで、米国を取り巻く同盟国と米国との間の議論が白熱しそうだ。