NY金が、一日の上げ幅としては史上最高を記録したのち、史上最高の下げ幅を記録するという前代未聞の大変動を演じた。
結論から言えば、投機マネーの自作自演。
上げのモメンタム(勢い)に乗って買い上げた後、下げのモメンタムに乗って売り攻撃を仕掛けた。
それだけの話。

以下の一年金価格グラフで俯瞰すれば、長期上昇トレンドが頭を叩かれた程度の話。
歴史的高値圏は続く。

筆者がそう言い切れるのは、金価格上昇の理由(ファンダメンタルズ)がいささかも変わっていないからだ。

基軸通貨米ドルへの信認低下。
中央銀行金大量購入。
地政学的リスク。

このいずれにも突然大きな変化が出たわけではない。
例えていえば、投機マネーの買いがドカ雪の如く積もり、自重に耐え兼ね、表層雪崩を惹き起こしたわけだ。でも、根雪の部分は厳然と残る。

なお、一つだけ、重要且つ新たな現象が起きた。
次期FRB議長としてウォーシュ氏が指名されたことだ。
これは今後の金価格にジワリ、ボディーブローの如く効くであろう。
ポイントは、同氏が量的引き締め(QT)を重視していること。量的緩和でバラまいたマネーの回収作業だ。

同氏は、そもそも、量的緩和に批判的である。大量の米国債を買い込み、巨額のマネーをばらまいた結果、FRBという組織が肥大化してしまった。一時は、買い取った米国債が9兆ドルに達していた。そこで、民間にばらまいたマネーを回収する「量的引き締め=QT」に移行中だ。現在は6.5兆ドルまで減ったが、それでも歴史的には巨額だ。
それゆえ、新議長就任後には、QTを優先させることになりそうだ。

トランプ氏が目の敵にしているFRBへの政治的圧力は続くであろう。それに対して、新議長は「FRBという組織を小さくする」ことで、トランプを宥める意図が透ける。

利下げについては、本当に失業率が悪化する場合には、実行する。しかし、QTを緩めることも利下げと同じく金融緩和効果が期待できる。
更に、ウォーシュ氏の義父がエステローダ化粧品会社の創業一族で、巨額の政治献金をしていることで、トランプ氏も、ウオーシュ氏をパウエル氏のごとく罵倒するようなことは出来ないことも認識しておくべきだ。

さて、話が長くなったが、QTは投資待機資金が減ることを意味する。それゆえ、金銀のような典型的な過剰流動性相場にとっては歓迎できない金融政策だ。
長期的な視点に立てば、金の長期上昇相場の最終到達点を、いくらか低くする要因にはなりうることを指摘しておきたい。