金積立や金ETFを買う若い世代の多くは、老後対策、特にインフレを前提に金を長期保有する傾向がある。
もっともな話だ。
どう見ても、ばらまき財政の結果、膨張した財政赤字をまともに返済できる見込みは無いに等しい。
財務省の立場で見れば、インフレになれば、国の債務の実質価値は減ってくれる。日銀に利上げは極力避けることを求めるであろう。勿論、日銀は政治的圧力を拒否することが当然だが、日本は、財務省と中央銀行があうんの呼吸で金融財政政策を運営しているのが実態といえよう。
実は、英語ではinflate its way out などと表現されるほど、米国でも事情は同じだ。
インフレは借金する側に朗報をもたらすのだ。
しかし、国民、特に、若い世代にとっては、たまったものではない。
将来のインフレの芽を摘み取るためには、増税で財政赤字を減らすことが本筋だが、増税で選挙は絶対に勝てない。
従って、国民は自ら財産を守られねばなるまい。
その手段のひとつが、インフレに強い金を地味に貯める感覚(貯金感覚)で買い増してゆくことだと、本欄で何回も繰り返し述べてきたところだ。
ちなみに、昨日も、渋谷のスタジオで、Youtube収録ありで、「有事の金のどか買いは、悪魔の選択」と述べてきたところだ。
ちなみに、若者の老後、即ち、30年後に金価格はいくらか、との質問も受けた。正直、全く予期していなかった質問ゆえ(私は、いつも、台本なしのぶっつけ本番(笑))一瞬、ウームと考えた。
先週から、諸々、公的機会で喋り続け、声も枯れていた。(これには参った)。
しかし、筆者は、ずばり、1万ドル!と答えた。
そのとき、頭に浮かんでいたのは、下記のKITCO金10年グラフだ。
まぁ、1万ドル予測でも安すぎたかなと思っている。
今や、金鉱石1トンから抽出できる純金の量たるや、1グラムでも御の字の世界だ。円建て金価格で2万円超えが今年の話題だが、2万円台で1グラム買えるなら「安い」。
それほど、金の生産過程を見るに、生産コストは、それこそインフレの影響で世界的に上昇。読者諸氏は、実際の世界の金鉱山に入る機会はあるまいが、筆者はワールド・ゴールド・カウンシル時代に、スポンサーである金鉱山を頻繁に訪問していた。特に印象に残っているのは、南アの金鉱山で、地下3,000メートルにエレベーター乗り継ぎで40分かけて降りたときだ。ちょっと背伸びすれば頭がぶつかるほどの地下空間。温度40度。湿度100%近く。
ドリリングの音と埃の嵐。「実は先月、ここで、落盤事故があったのですよ」となにげなく言われ、ゾ~ッとしたものだ。もう二度と、あそこに行く気はない!そして、今の金価格は安い!と体感したのだ。1トン3グラムなら、優良金鉱石。それを地上に運ぶだけで、どれほどの作業になるか。
まぁ、話が長くなったが、今後の金生産は、二次的生産とされるリサイクルへの依存度を高めるは必至だ。
ちなみに、今日のX@jefftoshimaでは、日本各地で発見されている新たな金鉱脈の話をしている。


