ワールド・ゴールド・カウンシルは、今回の金需要急増を「取り残される恐怖」英語でFOMO(fear of missing out)との用語で説明する。「皆が金を買っているようだから、私も買わなくては」という横並び意識の金買いだと言うのだ。この用語は、株の世界でも使われる。

しかし、FOMOを金買いの要因と決めつけるのは、違うと思う。
家族の一員が、或いは、お隣さんが、或いは、職場の同僚が、金を買って、大儲けしたらしいので、私も負けずに買わねば、という投資家心理は、最も危うい。

ひとたび、皆が売りに動けば、非常口に殺到するごとく、売り一色になるリスクを孕むことになる。
これは、投資ではなく、投機だ。

筆者が、今年の金買いを説明するならば、「金がアセット・クラス」として認知されたことが最も重要である。これまでは、漠とした「安全資産」というカテゴリーで、逃避資金の駆け込み寺の如き存在とされた。有事に逃げ込むので、有事の金とも言われてきた。

しかるに、今回は、NY市場を見るに、金を一つのアセット・クラスとして組み込む金融商品が、相次いで発売され、良好な成績を収めて、バンク・オブ・アメリカの機関投資家サーベイでも、今年の人気商品の一つとしてランクされている。リスク分散運用の有力な商品として見なされているのだ。これを、FOMO程度の用語でひとっからげで説明するのは無理筋であろう。なお、お手本のような金組み入れファンドのインタビュー記事が、明日の日経に載る予定。既に、電子版にはアップされている。↓ 必見。

世界で財政拡大、金組み入れの強み増す 米ファースト・イーグル運用者:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2276Y0S5A920C2000000/ https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2276Y0S5A920C2000000/


とまぁ、ひとくさり語ったところで、金価格の最新動向について。
 
昨晩、KITCOグラフの赤線と緑線が示すように、4,000ドルを回復した。Xの@jefftoshimaで、一足早く説明したことだが、この3日間で3,800ドル台まで下げた(青線)後、反騰。短期売買派の利益確定売り一巡後、出遅れ組には、恰好の新規参入のタイミングに。長期退蔵派は高みの見物。市場内部構造が、脂肪取れ、筋肉質=堅固になった。まさに金がアセット・クラスとして定着しつつある過程といえよう。

前日のKITCOグラフ

そして、今や旬の話題が、日経平均。
5万突破後、続騰。
カネは天下の回りもの、とはよく言ったものだ。
待っているだけではおカネは回ってこない。
自ら行動して出し入れすることで、天下で回すことが必要だ。その結果ともいえる現象が、日経平均5万超えと金4千ドル超えの同時達成といえる。

米国の量的緩和政策により巨額のドルが市中に出回り、米国の巨額貿易赤字により、そのドルの塊は、世界に流れた。
その受け皿のひとつが、日経平均でもあり、金でもあるということだ。